※本記事は、IT導入補助金2023の公募要領、ITツール登録要領に基づいた記事です。IT導入補助金2024においては、「ECサイト制作」は補助対象外となっていますので、ご注意ください。
ECサイト制作予算が3倍に増える?
IT導入補助金2023のポイント
「ECサイトにIT導入補助金が使えると聞いたけど、そもそも補助金って何?」
「色々調べたけど、手続きが大変そう…」
様々な情報が存在する中で、事業者の方々が知りたいのは、結局自社のような条件でも使えるの?ということだと思います。
また、ECサイト制作業者の方から、企業の規模問わずよく伺うのは、
「営業ツールとして使いたいけど、申請手続きなど後方体制を確保できない」
「現場にどんな風に提案させればよいか、うまく説明できない」
「一件でも多く、早く採択を獲得したいけど、社内にノウハウがない」
つまり、IT導入補助金が良いのは知っているけど、対応できない、採択数を増やせないというお悩み。
そんな疑問や悩みが原因で、予算の3倍の投資が出来る、成果が得られるチャンスを逃してほしくない!
そんな思いからこの記事では、IT導入補助金の採択実績2,262件の行政書士が、第三者の立場からわかりやすく、要点を解説します。この記事を読むだけでできる限り多くのヒントを見つけ、次のステップに進んでいただけるよう、様々な視点から解説していますので、まずは一番関心のあるところから読み、次第に理解を深めていっていただければ幸いです。
※本サイトでは、わかりやすく理解いただくために、言葉の言い回しなどの表現を変更して表記しています。
目次
予算の3倍の投資も!IT導入補助金のすすめ
デジタル技術の発達により、業務プロセスやビジネスモデルを変革する動きが進む中、ECサイトの活用はその一つとして、中小起業・小規模事業者の方々にも広がっています。
ECサイトは、営業や販売活動のリソースが少ない事業者の方にとっては、もたらされるメリットも大きい半面、大きな成果を期待すればするほど、コストの負担も大きくなりがちです。
そんな負担を軽くしてくれるのが、IT導入補助金です。これを利用することで、自己資金の減少を抑えつつもより大きな成果の期待できる、「予算の3倍の投資」を行うことが可能になります。
非常に魅力的な補助金ですが、交付を受けるには、おさえておくべきポイントがあります。
「そもそも自社でECサイトをどう活用できるのか」
「補助金とはどういう性質のものなのか」
「どうすればIT導入補助金に採択されるのか」
このような順で、解説していきたいと思います。
ECサイトとは
ECサイトの利用例
ECサイトとは、インターネット上で商品やサービスを取引するためのウェブサイトで、ネットショップやネット通販とも言われます。
商品を消費者に販売(BtoC)する小売業者だけでなく、卸売業者が小売店等との取引(BtoB)をオンライン上で行ったり、製造業者が直接消費者に販売(DtoC)するなど、多くの業種で利用されています。
また商品の売買だけでなく、サービス業者が予約や契約をオンライン上で行ったり、デジタルコンテンツやソフトウェアをサブスクリプション(定期的支払い、定期利用)提供する形のECサイトもあります。
ECサイトは販売面だけでなく、顧客とのコミュニケーションにも役立ちます。継続的にコミュニケーションを行うことで信頼関係を構築し、新たな商品やサービスを提案するためのマーケティング戦略にも利用できます。
規模の大小問わず、それぞれのビジネスに合ったECサイトを活用することは、現代において企業競争力を維持する重要なポイントと言えそうです。
市場の伸びと可能性
ECサイトの市場規模は、年々着実に拡大しています。
2021年、日本国内のEC市場はBtoCで20.7兆円(前年比7.35%増、5年前比1.4倍)、BtoBで372.7兆円(前年比11.3%増、5年前比1.3倍)になっています。
取引のEC化率は、BtoCの物販系で8.78%、BtoBで35.6%にまで伸びてきていますが、世界のBtoCのEC化率は推計19.6%、2025年には24.5%まで伸びると予測されており、日本でもまだまだ拡大するものと考えられます。
近年では国内取引のみならず、国境を超える「越境EC」も拡大しています。世界の越境ECの市場規模は2019年7,800億USドルで、7年後の2026年には6倍の4兆8,200 億USにまで拡大すると予測されています。
日本においても、物流のグローバル化、言語等の障壁の低減、アジアをはじめとした外国の購買力の拡大、少子化による国内消費の伸び悩みなどで、今後越境取引が更に拡大することが予想されます。
国際競争はECの普及で、益々身近なものになってきています。
参考:経済産業省「令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」
補助金とは
補助金とは、事業者の方々を支援する国や自治体の政策目標を実現するため、それらの目的にあった取り組みを行う事業者に、経費の一部を給付するものです。
事業者の方々は、政策と補助金の目的を理解し、自らの課題に基づいて事業を計画・申請します。その内容が審査を受け、採択されると、申請した事業を実施することができます。その後、事業実施の報告を行い、承認を受けてはじめて、補助金が交付されるという流れになります。
例えば、ECサイトの場合、サイトを制作し、ショッピングカートのシステムを導入し、商品を登録して公開して・・・そこまで完了してから、補助金が交付されるという流れになります。
ここで注意しなければならないのが、補助金が交付前に、自己資金で支払いを済ませなければならない点です。
事前に自己資金が必要となると、費用の捻出が難しい・・・
そう感じられた方は、日本政策金融公庫や銀行など、金融機関からの融資を検討するのもひとつの手段です。
補助金の採択を受けていると、予め一定額の返済の目途が立つことになるため、金融機関側も融資がしやすくなります。
当行政書士法人のお客様でも、このやりくりがとても上手な方がいます。よく補助金を申請されるのですが、補助金の申請が決まったらすぐに金融機関に相談に行って、融資を受けて、まずはそのお金で支払って・・・という流れで、上手にキャッシュフローのサイクルを回していらっしゃいます。
こうして自己資金以上の投資を積極的に行うことで、事業の成長スピードを加速させているのです。
これまで金融機関と融資の取引がないという事業者の方も、補助金の申請を機にお付き合いを始められてもよいのではないでしょうか。補助金のレバレッジ効果で、事業を拡大するチャンスです!
IT導入補助金とは
ECサイトと補助金について触れたところで、いよいよIT導入補助金についてです。
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者の方が、生産性向上を図るにあたっての課題やニーズに合ったITツール(ソフトウェア、サービス)を導入する際の、経費の一部に補助が受けられる制度です。
補助額・補助率・対象経費(対象ツール)
補助額・補助率・対象経費(対象ツール)は申請枠・類型によって異なりますが、全体で補助額は最大450万円、補助率は1/2~約2/3になっています。(「約」の理由は下記表下で説明します)
申請枠・類型は、どんなITツールを導入するかによって、「通常枠(A・B類型)」と「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・複数社連携IT導入類型・商流一括インボイス対応類型)」「セキュリティ対策推進枠」が設定されています。
デジタル化基盤導入枠の複数社連携IT導入類型と商流一括インボイス対応類型、セキュリティ対策推進枠については対象が限定されますので、ここでは割愛します。
通常枠 | デジタル化基盤導入枠 | |||
A類型 | B類型 | デジタル化基盤導入類型 | ||
補助額 上限額・下限額 |
5万円~150万円未満 | 150万円~450万円以下 | (下限なし)~350万円 | |
内、~50万円以下部分※ | 内、50万円超~350万円部分※ | |||
補助率 | 1/2以内 | 3/4以内 | 2/3以内 | |
対象ツール | 類型ごとのプロセス要件を満たし、労働生産性の向上に資するITツール | 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト |
※申請額が50万円を超える場合、補助額50万円までは補助率3/4で、補助額50万円を超える分については補助率2/3になります。例えば、補助額上限350万円の申請をする場合、対象経費666,667円 × 3/4=50万円、4,499,999円 × 2/3=300万円 という内訳になります。ご自身の申請額がいくらになるかは、IT導入補助金公式サイトのシミュレーターで計算できます。
なお、補助対象となるのは、「IT導入支援事業者」(ECの場合、ECサイト制作業者)が、事前に審査を受けて登録しているITツールに限定されています。
ECサイトに使えるのは「デジタル化基盤導入類型」
「デジタル化基盤導入類型」では、「会計・受発注・決済・ECのいずれかの機能を持つソフトウェア」が対象になっており、ECサイト制作は、ECの機能を保有する IT ツールとして、多くのIT導入支援事業者により登録・採択されています。
「A・B類型」では、業務効率化・売上アップといった、経営力の向上・強化につながる幅広いツールが対象になっていますが、ECサイトは対象外です。
ECサイトの制作が対象となる「デジタル化基盤導入類型」の場合、補助額の上限は350万円となります。
また補助対象経費として、ソフトウェア(ECサイト構築の場合は、それ自体が「ソフトウェア」に該当)だけではなく、ソフトウェアの利用に付随するPCやタブレット・プリンターなどのハードウェアにも活用できます(但し、ハードウェアのみの申請はできません)。
そしてこの申請類型は、
「生産性向上に加え、インボイス制度への対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進するため」
として、「A・B類型」よりも補助率が引き上げられています。
確かに、経費の2/3が戻ってくる(50万円以下部分については3/4!)というのは、他の小規模事業者持続化補助金等と比べても、優遇されていることが分かりますね。
ちなみに「インボイス制度」については、デジタル化基盤導入類型での申請のキーワードになりますので、後ほど詳しく解説します。
実は中小企業の5%も使えていない
このように、様々な補助金の中でも特に補助率が高く、ECサイトなどITツールを導入される方なら誰もが使いたい補助金ですが、実際に使われているのはごく少数です。
全国の中小企業数約358万社(2016年6月時点、中小企業庁)に対して、2017年以降のIT導入補助金総採択件数は約19.5万件((一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金 各年公式サイトより当法人調べ)です。単純計算すると5.4%になりますが、採択件数には個人事業主も含まれるので、中小企業のみにすると5%よりも更に下回るということになります。
その原因は様々ですが、IT導入補助金を知らない、または何らかのハードルがあって申請に至っていない方が圧倒的に多いというのが現状です。
ECサイトを提供している制作業者の方は是非、IT導入支援事業者の登録を行い、お客様へ補助金活用をご提案ください。そうすることで、もっと多くの方にIT導入補助金を役立てていただけると共に、より高度なECサイト構築の提案が可能となるはずです。
年 | 交付決定数 |
2017 | 14,351 |
2018 | 62,901 |
2019 | 7,386 |
2020 | 27,840 |
2021 | 30,825 |
2022 | 51,885 |
計 | 195,188 |
(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金 各年公式サイトより抜粋・編集
IT導入補助金のメリット
ここまで順に読んでくださった方には、IT導入補助金が非常にメリットの大きいものと感じていただけているのではないかと思います。
具体的に、そのメリットをどのように考えられるのかをご説明します。
予算の3倍の投資が可能
補助額・補助率・対象経費(対象ツール)でご説明した通り、補助率が約2/3ということは、投資に対する自己資金は約1/3に抑えられるということですね。
例えば、もともと全額自己資金で投資をするつもりだった方にとっては、サイト制作の負担が減った分、運用や広告に予算を回すことができます。
一方で、もともとまとまった投資を考えられなかった方にとっても、自己資金の3倍の投資ができることになります。
一般的に、より大きな投資価値を期待するには、それに比例して大きな投資予算が必要になるものですが、補助金を活用することで、予算3倍の価値のあるサービスに投資ができることになります。
お客様にこれらのメリットが生まれるため、IT導入補助金はECサイト制作業者の方にとっても、自社サービスの営業・販売機会を大きく広げ、顧客満足度の向上にもつながります。
ECサイトを制作したい事業者にはうってつけ
WEB業界での経験もある筆者の実感として、中小企業・小規模事業者の方がECサイトを制作するにあたってIT導入補助金を活用することは、非常にメリットが大きいものと思います。
確かにECサイトは、最近では無料で開設できるものもあるため、普及が加速してきています。
ただし、商品やサービスへのこだわり、ブランドの価値、お客様にとっての利便性などを大切にし、それをECサイトに反映しようと思えば思うほど、必要な費用は増えいきます。
ましてや「SEO」「WEBマーケティング」といった、インターネット上での販売に特有の工夫が必要となると、それ相応に必要な費用は大きくなり、100万円を超えるものも全く珍しくありません。費用が高ければ良いというものではありませんが、ECサイトにはそのような性質があるものです。
ECサイト制作に100万円という金額は、中小企業・小規模事業者の方にとってそう簡単に決断できるものではなく、費用を抑えるためにやりたいことをあきらめざるを得ないと考える方も多数います。それでは、ECサイトの持つ本来の力や費用対効果を、実感することが難しくなってしまいます。
IT導入補助金を活用できれば、手元の予算を3倍に増やし、より多くの希望を実現することができます。それによって、投資効果を得られる可能性も高められます。
デジタル化基盤導入類型の詳細
IT導入補助金をECサイト制作に活用するためには、「デジタル化基盤導入類型」での申請が必要です。実際に申請するにあたり、どのような要件が設けられているのか、公募要領から読み解いていきましょう。
デジタル化基盤導入類型の目的
補助金を申請し採択を受けるためには、細かな要件だけでなく、その大元の目的を理解することが大切です。
ではデジタル化基盤導入類型の目的は何かと言うと、ずばり「生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者等を支援するとともに、インボイス制度への対応も見据えつつ、企業間取引のデジタル化を強力に推進する」ことです。
IT導入補助金は当初、通常枠のA・B類型のみで、デジタル化基盤導入枠やデジタル化基盤導入類型はありませんでした。通常枠の目的は、主に業務効率化や売上アップを推進して労働生産性の向上を図ることでした。
それに対してデジタル化基盤導入類型は、生産性向上に加え、特にインボイス制度対応を見据えて、企業間取引のデジタル化を推進するという目的で追加されました。
補助対象:会計、受発注、決済、EC機能を持つツール
補助対象となるのは、会計、受発注、決済、ECのいずれかの機能を持つ、ソフトウェアとそのオプション・役務・ハードウェアです。
様々なITツールの中でもこれら4機能は、すべてインボイス対応に資するものとされています。
わかりやすいように、各機能を持つITツールの具体例を挙げると、以下のようなものです。
- 「会計」:仕訳、各種出納帳、総勘定元帳、試算表や財務三表(BS、PL、CF)をデジタル作成できるもの。freee、マネーフォワード、弥生会計などが有名
- 「受発注」:売り手側機能として売上請求管理、売掛・回収管理や電子記録、債権・手形管理、買い手側機能として仕入管理(仕入明細)、買掛・支払管理等の機能があるもの
- 「決済」:ECサイトに付帯するカード決済やその他の決済機能、売上等のデータをデジタル管理できるPOSレジなど
- 「EC」:商品販売などの商取引をオンライン上で行えるウェブサイト
補助対象にならない例
特にECサイトに関連性のあるツールで、よくお問い合わせを受ける対象外経費の一例です。
機能面で対象外になるもの
- EC機能を持たない、ホームページ・WEBアプリ・スマートフォンアプリ制作
- ブログ作成システム等で制作した簡易アプリケーション
- コンテンツ制作(VR・AR用、教育・教材用、デジタルサイネージ用)
- コンテンツ配信システム
- 広告宣伝費、広告宣伝に類するもの
- 単なる情報提供サービスや、会員登録しWEB上でサービスの提供を受ける仕組みのもので、業務機能を有さないもの
- 業務の効率化を図るものではなく、申請者が販売する商品やサービスに付加価値を加える事が目的のもの
契約・利用方法・支払い面で対象外になるもの
- 交付決定前に購入したソフトウェア(遡及申請はできません)
- 一般市場に販売されておらず、特定の顧客向けに限定されているもの(顧客の要望に基づいてゼロイチで開発するもの)
- 一時的な利用を目的とし、恒常的に利用されないもの
- リース料金、対外的に無料で提供されているもの(銀行振込またはクレジットカード一括払が必須です)
キーワード「インボイス制度」とは
本題からは外れますが、「インボイス制度」は、ECサイト制作に使えるIT導入補助金の「デジタル化基盤導入類型」において非常に重要なポイントになります。
今年2023年(令和5年)10月から始まるインボイス制度とは、請求書の発行と保存に関する新制度で、「適格請求書等保存方式」とも呼ばれます。「インボイス」(適格請求書)とは、正確な適用税率(軽減税率含む複数の税率)や消費税額など、一定の記載事項を満たす請求書のことを指します。
事業者間の取引では、消費税を預かったり支払ったりすることがありますが、課税事業者の場合、最終的にそれらを差し引き(仕入税額控除)して国に納税します。その際、軽減税率の導入以降、税率が10%のものと軽減税率8%のものとが混在し、正確な消費税額が管理・把握しにくいという問題がありました。
その問題を解決するために考えられたのが、インボイス制度です。課税する側の国にとっても、適正な納税を促し税収を確保するという意味で、非常に重要な制度になっています。
このインボイス制度にとって、ECサイトの導入は相性が良く、多くのECサイト用カートシステムが、適用税率の表示をはじめとしたインボイス制度対応を開始しています。IT導入補助金の中でも「デジタル化基盤導入類型」が優遇され、会計、受発注、決済と並んでECが対象とされているのには、このような背景があります。
IT導入補助金は審査制
ここまでで、IT導入補助金の目的や概要、メリットをご理解いただけたかと思います。しかし、交付決定の採否は審査制となっており、残念ながら全ての申請が必ず採択されるわけではありません。そこで、ここからは更に詳細な要件と、審査のポイントについてご説明します。
IT導入補助金の申請要件
申請内容に審査を受ける以前に、申請する事業者に対して、要件があります。申請類型によって若干異なる点もありますが、共通する項目で特徴的なものをご説明します。
中小企業・小規模事業者であること
IT導入補助金における「中小企業・小規模事業者」の規模は、「資本金の額又は出資の総額」または「常時使用する従業員の数」で基準が設けられています。
業種分類によって異なりますが、一例を挙げると以下のようになっています。
- 卸売業:1億円以下/100人以下
- 小売業:5千万円以下/50人以下
- 飲食店などサービス業:5千万円以下/100人以下
資本金額または従業員数のどちらかが基準を満たせばよいので、例えば小売業の場合、資本金が5000万円を超えている場合でも、従業員数が50人以下であれば対象となります。
ただし、発行済株式の総数または出資価格の総額の一定以上を大企業が所有していたり、大企業の役員の兼任者が役員の一定数以上を占めている場合などは、対象外になります。
対象業種
製造業、卸売業、小売業、飲食業などのサービス業をはじめ、一般的に補助金申請の対象外となることの多い医療法人、社会福祉法人、学校法人、財団法人、社団法人なども、IT導入補助金では対象になります。
診療所、保育園、福祉施設、老人ホーム、私立学校など、これまで補助金を申請する機会がなかった事業者の方も、ぜひチャレンジしてみてください。
事業年数
申請には、前期1期分の納税証明書や確定申告書が必要です。納税または確定申告前の方は申請できません。
申請対象外となる例(一例)
- 2022年のIT導入補助金で交付決定を受けた枠と同枠で、交付決定日から12ヶ月以内に、2023年のIT導入補助金を申請する場合
- IT導入支援事業者として登録している場合
- 法人格のない任意団体である場合
審査のポイント
IT導入補助金で採択されるためには、まずは申請される事業者の方ご自身が、補助金の制度と目的、事業者としての課題、それに対応するITツールをよく理解することが必要です。しかし、補助金やITツールまで詳しく理解するというのは、非常に困難なことだと思います。
そこで頼りになるのが、IT導入支援事業者(ECの場合、ECサイト制作業者)のサポートです。IT導入補助金では、補助金の交付申請からITツールの導入、報告まで、IT導入支援事業者と協同で行うようになっています。
IT導入支援事業者の方が、ITツールだけでなく、IT導入補助金の制度や傾向についてもよく理解していれば理想的ですが、経験の少ない方であっても、外部支援者として当行政書士法人のようなアドバイザーがいれば安心です。
とはいえ、採択の可能性を高めるためにはテクニックだけでなく、どれだけ申請者自身の生の声を申請内容に反映できるかの方が重要です。
「任せっきりにできるIT導入支援事業者」ではなく、ご自身の話を聞き、必要に応じた提案を行い、申請内容に反映してくれるIT導入支援事業者を選ぶのが、採択の可能性を高めるポイントでしょう。
審査加点項目「賃金引き上げ」の考え方
IT導入補助金の審査のポイントとして、「賃金引上げに対しての加点」があります。
「給与支給総額の増加」と「事業場内最低賃金の増加」がその具体的な内容になります。
- 給与支給総額:年率1.5%以上の増加
- 事業場内最低賃金:各都道府県における最低賃金+30円以上
3年間の賃金引上げ計画を作成し、それを従業員に表明することで、採択の可能性が高まります。
なお、この計画の未達成は、デジタル化基盤導入類型では補助金の返還などペナルティの対象にはなりませんが、補助金を交付される事業者様には是非努力目標として、取り組んでいただきたいポイントです
賃金引上げは、10年以上前から政府の課題・目標に取り上げられ続けています。しかし長引くデフレという状況下において、なかなかその目標が達成できずにいます。
一方で、企業の内部留保額は2021年度も高い水準となっており、それならば還元しデフレの状況改善を、という流れから、賃金引き上げが求められているのです。
IT導入補助金を申請し、採択の可能性を高めるためには、その趣旨を理解した上で取り組みを計画することが必要です。
これまでの予算構成、2023年の予算組み
補助金の採択件数には、用意されている「予算額」という上限があります。予算の消化具合によって、募集期間なども決まります。
そこで、ここからは予算についてお話します。これを理解することで、申請やITツールの導入、お客様への提案などの計画が立てやすくなります。
IT導入補助金の予算の出処
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の設備投資、販路開拓、IT導入、事業承継等を支援する、経済産業省「中小企業生産性革命推進事業」のひとつです。
グリーン分野への投資加速化、大胆な賃上げ、インボイスへの対応を支援すべく、補助率や上限額の引上げも行われている継続的な事業です。
事業開始当初は「IT導入補助金」「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」を三本柱として「中小企業生産性革命推進事業」が構成されていましたが、現在は「事業承継・引継ぎ補助金」が追加され、計4事業となっています。
この4事業を合計して、一つの事業予算が確保されています。
通年で使える予算措置
IT導入補助金に限らず、補助金は基本的に単年(1年ごと)で予算が組まれ、単年で消化するようになっています。
多くの場合、毎年2月頃から10月頃まで事業を行い、年度内に終了しなければならないというスケジュールになります。
つまり、その後10月から2月の間は、補助金を使った事業を行うことができないのです。これは、事業者の方にとって問題です。ビジネスチャンスが、必ずしもこの期間内にあるとは限りません。
そこで2020年の初め、当時の政権が2019年の補正予算を組む際に、中小企業の切れ目ない支援を目指し、2020年~2022年の向こう3年間の予算を確保したのです。
そうすることで、補助金が通年で使えるようになりました。また募集についても、通年で複数回行えるようになっており、事業者自身のタイミングで準備と申請ができるようになっています。
2022年までの予算とスケジュール
予算
2022年までの予算は、2019年の補正予算によって確保された3年間(2020年~2022年)の予算と、追加の補正予算から支出されました。
3年間の予算総額は3600億円で、単純平均すると1年あたり約1,200億円。当初はこれをIT導入補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金で共有することになっていました。
しかし、2020年の新型コロナウイルス拡大で大きな打撃を受ける中小企業・小規模事業者に対し、これだけでは足りない、より支援を厚くしなければならないということで、追加の補正予算が組まれました。
2020年の補正予算は1700億円、2021年は2,300億円で、これがもともとあった予算1年あたり1,200億円に上乗せされる形になりました。
その後2022年はコロナの状況も徐々に緩和しつつあり、前年の予算総額よりは小さくなったものの、引き続き2,001億円という大きな予算が組まれました。
スケジュール
スケジュールは申請類型によって異なります。ここではECサイトに使える「デジタル化基盤導入類型」について説明します。
直近2022年のスケジュールでは、初回(第一次)の交付申請受付開始が2022年3月31日、受付締切4月20日で、最終は2023年2月16日締切の第19次でした。
過去の補助金の公募スケジュールでは、年内を最終募集回としていることが多く、2022年は予算を共有する他の補助金の執行(補助金の交付)状況によって、延長されたものと考えられます。
各回の募集期間は基本的に約2週間のものが多く、採択結果が出るまでは約1ヵ月でした。
採択後、順次事業を実施し実績報告(ITツールの導入報告)、2023年10月効果報告(ITツール導入による効果の報告)という予定になっています。
2023年の予算とスケジュールの見込み
2023年12月6日、IT導入補助金2023の各種申請の最終締め切りが公表されました!詳しくは、下記ページでご確認ください。
最終回は1月29日!IT導入補助金2023スケジュール以下予測と見込みは、本記事公開時点でのものですので、ご注意ください。
2023年の予算額は、小規模事業者持続化補助金など他の生産性革命推進事業を合計して2,000億円、2022年の補正予算額とほぼ同じです。
申請件数が急激に伸びるということは考えにくいので、スケジュール感もほぼ同じようになるものと予測できます。
初回の交付申請受付開始は2023年3月28日で、これも2022年とほぼ同じタイミングです。
注意すべきは最終の交付申請期限で、2023年は年内で終了する可能性が高いと推測しています。なぜなら、事業の最終プロセスである効果報告が2024年4月と、2022年時(2023年10月)よりも6ヵ月早まっているからです。また公募要領には、交付申請の提出時期により、事業実施(ECサイトの場合、制作・運用開始)期間が3か月程度になる場合もある旨の記載があり、逆算すると、最終募集締め切りは年内になります。
早い段階で想定以上の交付申請があった場合、その分採択件数も増え、後になればなるほど残りの予算額は減り、採択されにくくなることも考えられます。
できるだけ早めに、余裕をもって申請することをおすすめします。
IT導入補助金 Q&A
全般に関するQ&A
Q1. IT導入補助金はECサイトに利用出来る?
IT導入補助金は、「デジタル化基盤導入類型」で、ECサイトに利用できます。ECサイトが、「デジタル化基盤導入類型」における支援目的の重要ポイント「インボイス制度対応の推進」を後押しするものだから、という考え方です。
もちろんECサイトには、業務効率化を促進し生産性向上につながるという面もありますが、補助対象としての要点はどちらかといえば、インボイス制度対応であると考えていただいて良いでしょう。
こうした背景を理解すると、コーポレートサイトなどEC機能のないホームページで使えない理由が分かりますね。
Q2. 小規模事業者持続化補助金との違いは?
小規模事業者持続化補助金との違いについてお問い合わせを受けることが多いのですが、要点をご説明します。
【利用できるサービス】
対象の幅が広いのが小規模事業者持続化補助金、ECサイトに使いやすいのがIT導入補助金です。
小規模事業者持続化補助金は、販路開拓につながる様々な取り組みの経費に使えます。
ただし2022年度から、ECサイトなどウェブサイトに関連する経費の単体申請ができなくなりました。チラシ作成など、ウェブサイトに関連しない経費とセットで申請することはできますが、補助額のうちウェブサイト関連費は1/4までしか計上できないようになっています。
IT導入補助金は、通常枠(A・B類型)では様々な業務プロセスにおいて労働生産性を向上させるITツール、デジタル化基盤導入類型では会計、受発注、決済、ECソフトの導入に使うことができます。
またIT導入補助金の場合、対象となるツールは、事前に事務局に登録された業者(IT導入支援事業者)が提供する、事前登録済みのITサービスのみです。
業者やツールの選択に一定の制約があるものの、いずれも事前に事務局の審査を受け、採択されていますので、信頼性に一定の担保があるというのはメリットです。当行政書士法人でも、IT導入支援事業者の登録サポートをさせていただいていますが、ITツールの登録には注意点が多く、審査を通るまで事務局とのやりとりが何度も続くケースもあります。
一方で、小規模事業者持続化補助金にはそのような決まりはありません。採択されてから業者を決めても良いし、どの業者でも問題ありません。
【対象者】
IT導入補助金のほうが、より幅広い事業者の方を対象としています。
小規模事業者持続化補助金は、名称にある通り「小規模事業者」向けの補助金です。従業員数で言うと、小売業やサービス業(宿泊業・娯楽業除く)の場合、常時使用する従業員の数は5人以下である必要があります。
IT導入補助金の場合、小売業なら常勤の従業員50人、サービス業なら100人以下で、それ以上でも資本金が5,000万円以下なら対象になります。
また、小規模事業者持続化補助金は、医療法人や社会福祉法人、一般社団法人などが対象外ですが、IT導入補助金では対象になっています。
【補助額・補助率】
補助額において、IT導入補助金が有利です。補助率はほぼ一緒で約3分の2ですが、補助額の幅が違います。
小規模事業者持続化補助金は、通常枠で上限50万円、特定の条件を満たす特別枠でも最大250万です。
IT導入補助金は、ECサイトに使えるデジタル化基盤導入類型では上限350万円と、小規模事業者持続化補助金より多くなっています。
【申請から採択結果が出るまでの期間】
IT導入補助金のほうが早く、1ヵ月程度で結果が出ます。
小規模事業者持続化補助金では、採択まで2ヵ月〜2ヵ月半かかります。
早くECサイトを制作したいという事業者の方にとっては、IT導入補助金がおすすめです。
Q3. 補助金で、経費は全額戻ってこないのか?
補助金では、経費の全額は戻ってきません。2/3を補助してもらった残りの1/3は、事業者が負担する必要があります。
補助金は、特定の事業者を支援するだけでなく、市場を活性化し、国が支出した以上の商流を発生させるようにも作られています。
IT導入補助金の場合、導入によって多くのITツール・サービスが利用されることになりますが、IT産業は現代において、人々の生活を豊かにする様々な産業の中でも、非常に大きな存在です。その産業への投資によって、更に新たなITサービスが開発されるという循環が生み出せれば、補助金を利用する事業者の方々とITベンダー・サービス事業者の範囲を超えて、幅広く国民全体にメリットがあると考えられます。
また、ネガティブな理由としてはやはり、一定額の自己負担を必要とすることで、無計画な申請や、事業に真剣に取り組まないという状況を防ぐ、という意味合いもあるのでしょう。
自社の課題を明確にし、IT導入支援事業者など専門家の助言や支援も受けて事業を計画し、より費用対効果の高い取り組みにしてください。
Q4. 申請から採択、またそれ以降の流れは?
IT導入補助金を活用してECサイトを制作する場合、下記のような流れになります。
- 交付申請:補助事業者(=補助金申請者)とIT導入支援事業者(=ECサイト制作業者)
- 審査:IT導入補助金事務局(=事務局)
- 交付決定通知(採択):事務局
- 事業実施
- 契約:補助金申請者とECサイト制作業者
- 代金支払い・ECサイト制作・ツール導入:補助金申請者とECサイト制作業者
- 4.について事務局へ事業実績報告:補助金申請者とECサイト制作業者
- 補助金確定通知:事務局
- 補助金交付:事務局→補助金申請者
- 事業実施効果報告:補助金申請者とECサイト制作業者
つまりIT導入補助金では、交付申請、実績報告、効果報告の3つのタイミングで、申請の手続きが必要です。
交付決定通知(採択)後、事業実施という流れになるため、事前にECサイト制作・完了がいつ頃のタイミングになるのかは、交付決定日から計算して把握しておく必要があります。
また実績報告では、ECサイトの管理画面など導入されたツールや、完成したECサイトのキャプチャ、その他経費に関する証憑資料の提出を求められます。ECサイト制作やツール導入時には、実績報告時に必要な内容を踏まえて実施するようにしましょう。
補助対象となるサービスやツールを導入日から一年未満で利用しなくなった場合、または実績報告で提出された利用期間未満で利用しなくなった場合、補助金の返還などのペナルティが生じますので、注意してください。
IT導入補助金2023後期【実績報告】採択後補助金を受け取るための手続き効果報告では、ECサイトやツールの導入によってもたらされた効果(賃金引上げの状況や、事業者としての全体の売上など)を報告します。ECサイト制作が対象となるデジタル化基盤導入類型では1~2回、通常枠(A・B類型)では3年間、年1回(合計3回)の報告が必要です。
Q5. 補助金が交付されるタイミングは?
Q4. 流れの通り、補助金が交付されるタイミングは実績報告後で、その1~2ヵ月後です。採択後、導入・支払いが早ければ早い程、 補助金の交付は早くなる傾向にあります。
具体的に申請から何ヵ月ぐらいかは、一概に言いづらいところですが、当行政書士法人がサポートしている事例では、申請から補助金交付まで平均6ヵ月程度です。
特にECサイトの場合、導入=ECサイト制作となるため、制作完了・運用開始をもって実績報告という流れになります。そのため、ECサイトの制作内容・規模のほか、制作会社によっても補助金の交付時期が異なります。
Q6. IT導入補助金の申請の順序は?
IT導入補助金は全てオンライン申請になっており、以下のような順で手続きが必要です
- gBizID取得:補助事業者(=補助金申請者)
- 「みらデジ経営チェック」実施:補助事業者
- SECURITY ACTION ID取得:補助事業者
- 「申請マイページ」開設:IT導入支援事業者(=ECサイト制作業者等)と補助事業者
- 申請内容入力:補助事業者
- 申請内容入力:IT導入支援事業者
- 申請内容確認・提出:補助事業者
各申請作業を、他者が代行することは認められていません。
IT導入補助金開始当初は、ECサイト制作業者等が申請を代行することができましたが、なりすまし申請を防ぐため、2019年からはSMS認証(携帯電話を使った本人確認)も導入され、申請者が自己責任で申請しなければならないルールになっています。
1. gBizID(ジービズアイディ)取得
IT導入補助金の申請要件であり、手続き上でも、gBizIDがないと進められない仕組みになっています。
gBizIDは、複数の行政サービスを1つのアカウントで利用できる認証システムで、無料で取得できます。申請手続きの簡略化や審査の迅速化の面からも、各種補助金の申請手続きをオンライン化するため、経済産業省と中小企業庁が利用を推奨しています。
【手続きの流れ】
- ウェブ上で申請:
入力する内容は、ほぼ事業者に関する基本情報のみで、20~30分程度で済みます - 印鑑証明書または印鑑登録証明書の原本送付:
印鑑証明書(法人)は法務局、印鑑登録証明書(個人)は市役所などの地方自治体窓口で取得して、事務局へ郵送します - 事務局がID発行:
メールで届き、案内に従ってパスワードを設定すれば完了です
取得までには1~2週間程度時間がかかります。こちらの取得待ちで、交付申請が間に合わないということも多々ありますで、補助金の交付申請とは別に、早めに手続きしておくのがよいでしょう。
注意点として、IDにはいくつかの種類があり、申請時は「gBizIDプライム」が必要です。印鑑証明書の不要な、「gBizIDエントリー」「暫定gBbizIDプライム」(2020年の夏頃、特別措置として発行)では申請できません。gBizIDはあるけど印鑑証明を送った記憶がない、という方は、専用サイトでご自身のステータスが分かりますので、お確かめください。
2. 「みらデジ経営チェック」実施
2023年度の変更点の一つで、新たに追加されたプロセスです。
「みらデジ経営チェック」は、中小企業庁の事業で運営されるポータルサイト上のオンラインチェックツールで、簡単な設問に回答することで、同業他社と比較した経営課題やデジタル化の進捗度などを把握し、経営課題をデジタル化により解決することをサポートするものです。
チェックの実施には、ひとつ前のプロセスのgBizIDプライムの取得が必要です。
3. SECURITY ACTION(セキュリティアクション)ID取得
SECURITY ACTIONは、中小企業・小規模事業者等自らが、情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。
ITツールを導入する以上、セキュリティ上のリスクが存在しますが、国として補助金を出してITツールの導入を促進するわけですから、できる限りそのリスクを低減するため、利用者の方それぞれにセキュリティ対策の意識を高めてもらう目的で、こちらもIT導入補助金申請の必須要件となっています。
手続き自体は簡単で、オンラインで宣言すべき内容を確認し申請、その後30分程度で「自己宣言ID」が発行されます。
4.「申請マイページ」開設以降は、すべてマイページ上の案内に従って行う手続きです。
Q7. 申請や報告は全て自分で行う必要があるのか?
IT導入補助金は、IT導入支援事業者(ECサイト制作業者等)のサポートを受けて申請、実施、報告をするように設計されています。
多くの補助金ではそのような設計がなく、対象となるシステムやサービスの要件、必要書類、各種期限など、全て申請者自身が調べて、手続きしないといけないようになっています。
そのため、書式の間違いで度々やり直したり、最悪の場合補助金の交付が受けられない事態となる場合もあります。
本業の忙しい合間を縫って行うには時間的にも難しく、自社だけで確認するには注意事項が多すぎる!というのが正直なところだと思いますが、補助金に時間を取られて目の前のビジネスチャンスを逃してしまっては、本末転倒です。
このような状況を改善するため、ITベンダーがIT導入支援事業者として、伴走するような仕組みになっているのです。
IT導入支援事業者は、事前に事業者自身とITツール両方で審査を受けて登録されています。もちろん申請者本人が、中身を理解して申請しなければなりませんが、ITベンダーの説明に従って手続きを行い、相互に確認するようになっています。
手続き負担面で申請者に優しい補助金で、そういう点もメリットの一つです。
Q8. IT導入補助金のデメリットは?
これだけたくさんのメリットがあるという話を聞いていると、何かデメリットがあるのではと、気になりますね。
当行政書士法人もこれまで多くの事業者様のサポートをしてきましたが、現時点で実際デメリットと言えるようなことは、審査制で100%通るわけではない、というところぐらいです。
補助金のデメリットとして挙がりがちな「報告の手間」についても、特にECサイトに利用できる「デジタル化基盤導入類型」においては、かなり簡素化されています。
時間をおいて報告を求められる「事業実施効果報告」についても、通常枠では1年に1回、3年間で3回必要ですが、デジタル化基盤導入類型では1回のみになっています。
唯一のデメリット、審査に落ちる可能性ですが、過去の採択率を見てみましょう。IT導入補助金は2017年から始まっていますが、2019年以降を挙げると以下の通りです。
年 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 | |
2019 | 25,669 | 7,386 | 28.7% | |
2020 | 未発表 | 27,840 | ー | |
2021 | 52,026 | 30,825 | 59.2% | |
2022 | 全体 | 70,228 | 51,885 | 73.9% |
デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) |
45,836 | 37,639 | 82.1% | |
通常枠 | 24,095 | 13,959 | 57.9% |
(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金 各年公式サイトより抜粋・編集
他の補助金の採択率は平均50%程度と言われていますので、2019年の28.7%というのはかなり低く、競争率が高い補助金であったと言えます。
2020年はコロナがあり、予算が1,700億円上乗せされ、結果採択件数も4倍近くに増えています。ただ、申請件数が公表されてないので、採択率は分かりません。後半の募集回では採択がほとんど出ないという状況で、特に採択率が低かったと推測しています。その当時のイメージで、IT導入補助金は非常に採択率が低く、厳しいと思われている方もいらっしゃるのではないかと思います
2021年は一転して、採択率が約6割に上昇しました。申請件数の増加を受け、更に大きい2,300億円の予算上乗せが背景にあると考えられます。
2022年は全体の採択率だと73.9%、ECサイト制作に使える「デジタル化基盤導入類型」では82.1%と大きく上昇しています。予算の上乗せは2,001億円で2021年より若干減少した一方、申請件数は増え、更に採択率が上がっているので、2,001億円のうちIT導入補助金に割り当てられた金額が大きくなったことが考えられます。
2023年も予算や要件は大きく変化していないため、きちんとポイントを押さえて申請すれば、採択が見込まれると考えています。そういう意味で、もはやほとんどデメリットはないと言ってもよいのではないでしょうか。
Q9. IT導入補助金の採択の分かれ道は?
IT導入支援事業者となるECサイト制作業者の選び方と、申請の内容が、採択に至る重要なポイントと言えます。
【IT導入支援事業者の選び方】
審査のポイントで、IT導入支援事業者(ECサイト制作業者等)と伴走することが、この補助金の特徴であると述べました。つまり、申請者自身もさることながら、ECサイト制作業者側が申請要件などをよく理解していないと、間違った方向に進んでしまう可能性があるということです。
「IT導入支援事業者は事前審査を受けているんだし、みんな採択される方法を教えてもらっているんじゃないのか?」と質問を受けることがありますが、IT導入補助金の事務局が正解を教えてくれることはありません。
IT導入支援事業者自身も、自助努力で情報収集し、経験し、ノウハウを積み重ねていく必要があり、それによって採択率にも差が出ます。
そこで、より採択の可能性を高めるためには、支援年数が長く多くの採択実績を持つ、または、外部にそのような経験やノウハウを持つ専門家やコンサルティング会社などと連携しているECサイト制作業者を選ぶことです。
IT導入支援事業者として登録されているECサイト制作業者であっても、そのような体制はないほうが多いと思いますので、依頼先を選ぶ際にはそのような観点でも、比較検討されることをおすすめします。
【申請の内容】
以下のような要点が挙げられます
- 事実情報及び添付書類に不備はないか?
簡単なことのようにも見えますが、実際これができていないことが非常に多いです。十分に確認しながら、申請してください。
- 自社の現状分析は出来ているか?
- 今回のITツールを導入する目的は何なのか?
- 現状の課題がそのITツールで改善できるのか?
これらの内容が首尾一貫し、審査時に分かりやすいようになっているかが重要です。
ご自身だけでは難しいところも多いと思いますので、ECサイト制作業者など第三者の目を通すなどして、上手く申請内容を作成してください。
当行政書士法人では、累計2,262件の採択実績から、これらの要点を踏まえた申請書作成のサポートを行っています。
Q10. 採択されるECサイトとはどんなものか?
ECサイトの制作内容は補助金審査の合否に影響があるのか、という質問もよく受けますが、これまでの実績では影響がないと言えます。どういうECサイトを作る計画であったとしても、基本的には採択・不採択に影響していないと考えられます。
ただし、そもそも利用が難しいパターンがあります。「既存ECサイト」の「リニューアル」です。
既存ECサイトがあっても、新たに別の商品やサービスを扱うECサイトを立ち上げたり、これまで銀行振込や代引きのみで、決済機能がなかったという場合は対象になります。
※既にクレジットカード決済を導入しているものの、新たな決済方法の追加として、リニューアルが認められる場合がありますが、詳細はIT導入支援事業者との調整が必要です。
参考として、採択されたECサイト制作の一例を挙げると、以下の通りです。
- これから新規でECサイトを制作したい
- グループ会社で新しく新設法人を立ち上げるため、ECサイトを制作したい
- 新規事業として新たに商品・サービスを展開したいので新規でECサイトを立ち上げたい(すでにECサイトが別にあってもOK)
- これまでAmazon や楽天市場等(サブドメ)で展開していたため新たに自社ECサイトを立ち上げたい
- ドメインは取得しているがECサイトがないため新たにECサイトを立ち上げたい
- WEB サイト(EC機能がないもの)から EC サイトへリニューアルしたい
採択要件に関するQ&A
Q1. 法人設立1年目は採択される?
会社設立・事業開始をして1年未満の場合は、申請に必要な書類を用意できる場合でも、採択を受けることは難しいというのが実情です。
Q2. 赤字事業者は採択される?
特にコロナ以降はこの質問が非常に多いですが、赤字でも採択・不採択に影響はないでしょう。当行政書士法人のサポート事例からも、赤字だからという理由で採択されないという傾向は見られません。
Q3. 2期連続黒字なら必ず採択される?
黒字だからといって、必ず採択されるということではありません。
自社の事業において、ITツールを導入してどんな取り組みを行い、どういう将来像を描いているのか。それがIT導入補助金そのものの事業目的にどう一致しているのかということを整理し、分かりやすく審査側に伝えることが必要です。
Q4. グループ会社の申請は可能?
可能です。グループ会社を補助事業者として申請してください。
Q5. 1年に何度も申請は可能?
IT導入補助金の「同じ類型」で申請する場合・・・過去の申請時に不採択または採択後辞退している場合、申請できます。
IT導入補助金の「異なる類型」で申請する場合・・・過去の申請時に採択されていても、それとは別の類型に申請可能です。
Q6. NPO法人、一般社団法人、登記されている組合でも採択される?
NPO法人、一般社団法人、法人格を持つ組合も採択されます。
医療法人や社会福祉法人など、今まで補助金の対象外であることが多かった方々も、IT導入補助金では対象になっています。ぜひこの機会に活用していただければと思います。
Q7. 物販経験がなくても採択される?
大丈夫です。製造業や飲食業の方で、物販のECサイト制作としてIT導入補助金に申請され、採択を受けている例もあります。
8. 一度不採択になった場合は、再申請は可能?
可能です。一回落ちたから終わりというわけではありません。不採択となったのが過去の年度であっても同じ年度内であっても、何度でもチャレンジすることが可能です。
IT導入補助金2023の申請スケジュール
IT導入支援事業者・ITツールの登録申請:
2023年3月20日(月)受付開始~終了時期は後日案内予定
事業スケジュール(デジタル化基盤導入類型):
1次締切分 | 締切日 | 2023年4月25日(火)17:00 |
交付決定日 | 2023年5月31日(水)(予定) | |
事業実施期間 | 交付決定~2023年11月30日(木)17:00 | |
事業実績報告期限 | 2023年11月30日(木)17:00 | |
2次締切分 | 締切日 | 2023年5月16日(火)17:00 |
交付決定日 | 2023年6月21日(水)(予定) | |
事業実施期間 | 交付決定~2023年11月30日(木)17:00 | |
事業実績報告期限 | 2023年11月30日(木)17:00 | |
3次締切分 | 締切日 | 2023年6月2日(金)17:00 |
交付決定日 | 2023年7月11日(火)17:00 | |
事業実施期間 | 交付決定~2023年11月30日(木)17:00 | |
事業実績報告期限 | 2023年11月30日(木)17:00 | |
4次締切分 | 締切日 | 2023年6月20日(火) |
交付決定日 | 2023年8月1日(火)(予定) | |
事業実施期間 | 交付決定~2023年11月30日(木)17:00 | |
事業実績報告期限 | 2023年11月30日(木)17:00 | |
5次締切分 | 締切日 | 2023年7月10日(月) |
交付決定日 | 2023年8月22日(火)(予定) | |
事業実施期間 | 交付決定~2023年11月30日(木)17:00 | |
事業実績報告期限 | 2023年11月30日(木)17:00 | |
6次締切分 | 締切日 | 2023年7月31日(月) |
交付決定日 | 2023年9月12日(火)(予定) | |
事業実施期間 | 交付決定~2023年11月30日(木)17:00 | |
事業実績報告期限 | 2023年11月30日(木)17:00 |
(2023/5/16時点で確定している募集回のスケジュールのみ。以降のスケジュールは随時、公式サイトで発表されます)
事業実施効果報告:2024年4月
まとめ
IT導入補助金にはこのように、より多くの事業者の方に活用し、生産性向上やインボイス制度対応につなげてもらえるよう、予算確保や比較的シンプルな制度設計が行われています。
それでも、本業に忙しく情報が届かない方、知っていても色んな理由で二の足を踏んでいる方がまだまだ多いのが現実です。
この記事を読んで、「少しでも疑問が解消した」「前向きに検討したい」「IT導入補助金に採択されたい」「明日から顧客に提案したい!」と思ってくださる方が増えれば何よりです。
そして、「ECサイトを制作するためにIT導入支援事業者を紹介してほしい!」「IT導入支援事業者として申請をサポートしてほしい!」と思った方は是非、G1行政書士法人にお気軽にご相談ください。皆様のチャンスを現実のものにできるよう、精一杯サポートさせていただきます。