目次
IT導入補助金は個人事業主でも申請できる
IT導入補助金は「中小企業・小規模事業者等」向けの補助金ですが、法人だけではなく、個人事業主やフリーランスの方も申請することが可能となっています。
自社の課題やニーズに合ったITツールを導入するための経費を最大で「450万円」まで一部補助してもらうことができる制度ですので、是非活用したいですよね。
そこでこの記事では、個人事業主やフリーランスの方がIT導入補助金を利用する場合の申請方法や、注意点を解説していきます。
申請の対象となる事業者の定義
個人事業主やフリーランスの方の場合、申請の対象となる事業者は、業種ごとに「常時使用する従業員」(常勤)の人数によって定義されます。これは、通常枠(A・B類型)・セキュリティ対策推進枠・デジタル化基盤導入枠共通です。
※法人の場合資本金の額も条件となりますが、本記事は個人事業主の方向けの情報の為、割愛しております。
なお、個人事業主本人は「常時使用する従業員」には該当しません。
(中小企業等の定義)
業種 |
従業員 |
|
常勤 |
||
従業員規模が、右記以下の場合対象 |
製造業、建設業、運輸業 |
300人 |
卸売業 |
100人 |
|
サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) |
100人 |
|
小売業 |
50人 |
|
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) |
900人 |
|
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 |
300人 |
|
旅館業 |
200人 |
|
その他の業種(上記以外) |
300人 |
(小規模事業者等の定義)
業種分類 |
従業員 |
常勤 |
|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) |
5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 |
20人以下 |
製造業その他 |
20人以下 |
IT導入補助金2023 公式サイトより抜粋・編集
申請時に1期分の納税証明書・確定申告書が必要
個人事業主の方の場合、交付申請時に直近分の納税証明書(その1もしくはその2)と確定申告書の提出が必要です。
個人事業主か法人であるかを問わず、1期を過ぎた後に納税証明書(その1、その2)が発行されるため、こちらの証明書をはじめとする必要書類が提出できない場合、交付申請をすることはできません。
※令和5年のIT導入補助金の申請では、個人事業主の方の場合、基本的に令和4年度分の書類が必要になります。
個人事業主の申請・採択事例
「個人事業主の場合、どのような業種の人が採択されているのか」という点が気になる方もいらっしゃるかと思います。
個人事業主においても法人と同様、飲食店やエステサロン・整体、アパレルや学習塾など、様々な業種・事業を行う方が採択されています。
どんな申請・採択例があるかについては、業種や従業員規模、事業年数、事業内容とともに、導入したITツールや目的(課題)を当サイト「採択事例集」に多数掲載しています。
個人事業主でも申請可能なIT導入補助金とは
IT導入補助金では、補助額・補助率や、対象とするITツールの要件が枠ごとに異なります。ここでは、特に申請数の多い通常枠とデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)について紹介します。
通常枠(A・B類型)
ITツールの要件
IT導入補助金の事務局に事前登録されたITツールであり、
- 【A類型】下の表のうち、申請するITツールが1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアである必要があります(汎用プロセスのみは不可)
- 【B類型】下の表のうち、4種類以上のプロセスを保有するソフトウェアである必要があります
種別 |
プロセス名 |
|
業務プロセス |
共通プロセス |
顧客対応・販売支援 |
決済・債権債務・資金回収 |
||
調達・供給・在庫・物流 |
||
会計・財務・経営 |
||
総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス |
||
業種特化型プロセス |
業種固有プロセス |
|
汎用プロセス |
汎用・自動化・分析ツール |
補助額・補助率
通常枠 |
||
A類型 |
B類型 |
|
補助対象経費 |
ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分) ・導入関連費 |
|
ITツールの要件 ※下の表参照 |
1プロセス以上 |
4プロセス以上 |
補助率 |
1/2以内 |
|
上限額・下限額 |
5万円~150万円未満 |
150万円~450万円以下 |
賃上げ目標要件 |
加点 |
必須 |
IT導入補助金2023 公式サイトより抜粋・編集
自社の置かれた環境から強み・弱みを認識、分析した上で、自社の課題にあったITツールの導入を行い、それによって業務効率化・売上アップといった経営力の向上を達成することを目的とします。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
ITツールの要件
IT導入補助金の事務局に事前登録されたITツールであり、会計・受発注・決済・EC
のうち1機能または2機能以上を保有するツールである必要があります。
補助額・補助率
ソフトウェア等 |
||
補助対象経費 |
ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分) ・導入関連費 |
|
機能要件 |
会計・受発注・決済・EC のうち1機能以上 |
会計・受発注・決済・EC のうち2機能以上 |
補助率 |
3/4以内 |
2/3以内 |
上限額・下限額 |
(下限なし)~50万円以下 |
50万円超~350万円 |
ハードウェア |
||
補助対象経費 |
PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機 |
レジ・券売機等 |
補助率 |
1/2以内 |
|
上限額 |
10万円 |
20万円 |
IT導入補助金2023 公式サイトより抜粋・編集
インボイス対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進することを目的とします。
そのため、ソフトウェアについては「EC、会計、受発注、決済」の機能を持つものに限定されています。
通常枠では対象外となっている、パソコンやタブレットなどのハードウェアも、ITツールの使用に資するものであれば補助対象となり、補助率が通常枠よりも高く、優先的に支援されるようになっている点が特徴です。
IT導入補助金2023の変更点
IT導入補助金2022からの変更について、主なポイントをご紹介します。
補助下限の引き下げ
2022年度の通常枠では、補助額の下限が30万円でしたが、2023年度は5万円に変更となっています。以前までは最低でも60万円の投資をして、そこから30万円の補助金が受け取れるという仕組みでしたが、今年度からは最低10万円の投資からITツールを導入することができるようになりました。
また同様に、デジタル化基盤導入類型の補助額についても、5万円の下限が撤廃され、下限なしとなっています。少額の投資に対しても、補助金の申請が行いやすくなりました。
【通常枠】クラウド利用料の補助期間が最大2年に延長
クラウド利用料について、昨年までは通常枠が1年分、デジタル化基盤導入枠が2年分の補助期間となっていましたが、今年は通常枠でも補助期間が最大2年に延長されました。
申請要件に「みらデジ経営チェック」の実施・gBiz IDとの連携が追加
「みらデジ」とは、中小企業・小規模事業者等の経営課題をデジタル化により解決することをサポートするポータルサイト(中小企業庁が実施)です。
「みらデジ経営チェック」とは、そのポータルサイト上に登録し、オンライン上の設問に回答することで、自社の経営課題のセルフチェックを行うものです。この登録情報を、IT導入補助金の申請時に使用するgBiz IDと連携することが、事前に必要な手続きとして加わりました。
その他、年度ごとだけでなく、同じ年度内の申請回ごとにも、公募要領や申請の手引き等の資料に更新が行われることがありますので、ご自身の申請タイミングに合わせて必ず事前確認を行いましょう。
個人事業主のIT導入補助金の申請方法
ここからは、個人事業主の実際の申請方法についてご紹介していきます。
①IT導入支援事業者の選定・ITツールの選択
IT導入補助金は、他の補助金とは異なり、IT導入支援事業者と協力して申請をする必要があります。補助金申請者単独で申請を行うことはできません。
IT導入支援事業者とは、中小企業・小規模事業者がIT導入補助金を申請・受給する際に、事業を一緒に実施するパートナーとしてサポート業務を行う事業者のことで、ITツールのベンダー・サービス事業者であることが一般的です。
また前述の通り、申請対象となるITツールについても、事前にIT導入補助金事務局に登録され、IT導入支援事業者が提供するツール(ソフトウェア、サービス等)のみとなっていますので、パートナーとなるITベンダー・サービス事業者やツールの選定にあたっては、IT導入補助金事務局への登録があるかを、事前に確認することが大切です。
また、ITツールを選択する際は、業務の効率化、生産性の向上、顧客対応の改善など自社の課題・ニーズを解決できるものを選びましょう。
IT導入補助金の採択へ向けては、補助金の事業目的に沿った機能を持つITツールの選択ができているかがキーポイントになります。適切なITツールを選ぶことで、補助金を効果的に使用可能であるとアピールできます。
なお、G1行政書士法人ではIT導入支援事業者の紹介も行っています。
「いつも利用しているITサービス事業者がIT導入支援事業者に登録していない」
「新規で依頼したいと考えているが、どのIT導入支援事業者に頼めば良いかわからない」
という方は、是非当法人にご相談ください。
②各種オンラインアカウントの取得
gBizID取得
gBizIDとは、ひとつのIDとパスワードで、複数の行政サービスを利用できる認証システムの事です。
これはIT導入補助金の申請要件であり、手続き上でも、「gBizIDプライム」アカウントがないと進められない仕組みになっています。
gBizIDプライムをお持ちでない場合は、「gBizID」ホームページより取得する必要がありますが、アカウントID発行までの期間は2週間程度となっているため、早めに申請手続きをすることをおすすめします。
「みらデジ経営チェック」実施
「みらデジ経営チェック」は、中小企業庁の事業で運営されるポータルサイト上のオンラインチェックツールで、簡単な設問に回答することで、同業他社と比較した経営課題やデジタル化の進捗度などを把握し、経営課題をデジタル化により解決することをサポートするものです。
なおこのチェックの実施後は、上述のgBizIDプライムとの情報連携が必要です。
SECURITY ACTION ID取得
SECURITY ACTIONは、中小企業・小規模事業者等自らが、情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。
ITツールを導入する以上、セキュリティ上のリスクが存在しますが、国として補助金を出してITツールの導入を促進するわけですから、できる限りそのリスクを低減するため、利用者の方それぞれにセキュリティ対策の意識を高めてもらう目的で、こちらもIT導入補助金申請の必須要件となっています。
手続き自体は簡単で、オンラインで宣言すべき内容を確認し申請、その後30分程度で「自己宣言ID」が発行されます。
③個人事業主が必要な書類の取得
個人事業主がIT導入補助金を申請するにあたり以下の書類が必要となりますので、忘れずに準備しましょう。書類ごとの注意点については「交付申請の手引き」にも詳細に記載がありますが、当法人がサポートさせていただいている中でも、提出直前になって不備が見つかるなどの例がありますので、必ず手引きも確認するようにしましょう。
本人確認書類 |
運転免許証または運転経歴証明書または住民票 ※運転免許証は登録申請日が有効期限内のもので、裏面に変更履歴が記載されている場合は裏面の提出も必要です ※住民票は発行から3ヶ月以内のものに限られます |
事業実態確認書類1 |
税務署で発行された直近分の所得税の納税証明書(「その1」若しくは「その2」) |
事業実態確認書類2 |
税務署が受領した直近分の確定申告書の控え |
④交付申請
各アカウントや書類の取得、準備が完了したら、いよいよ交付申請をします。IT導入補助金の交付申請は、オンライン上で行います。
・申請マイページの開設
IT導入支援事業者がお客様を「申請マイページ」へ招待します。
届いた招待メールに記載されているURLより、申請マイページの開設を行う必要がありますが、メール受信後72時間が経過すると無効になってしまうため、届いたら速やかに開設手続きをしましょう。
招待メールに記載されているURLをクリックするとgBizIDの入力が求められるため、gBizIDのご準備をお願いします。
申請マイページ開設以降は、マイページ上の案内に従って手続きを行います。
申請者だけで申請を行うわけではなく、申請者とIT導入支援事業者で必要事項を入力し、申請書を作り上げていくという流れになります。
⑤交付申請後の流れ
交付申請以降の大まかな流れは以下のようになります。
申請締切日(申請回)ごとに、それぞれの期間や期限が決められていますので、申請前に確認しておきましょう。
- 事務局審査
- 交付決定通知(採択)
- 補助事業の実施(ITツールの発注・契約・支払い)
- 事業実績報告
- 補助金交付手続き
- 事業実施効果報告
詳しくは本サイトの下記ページもご参照ください。

IT導入補助金2023の今後のスケジュール
申請や交付決定等のスケジュールについては、申請枠によって異なりますが、随時IT導入補助金2023公式サイト「事業スケジュール」ページに公開されます。
本サイトの下記ページにも、一部記載がございます。

まとめ
本記事では、個人事業主やフリーランスの方がIT導入補助金の申請をする際の概要についてお伝えしました。
準備書類などで若干の違いはあるものの、注意点や申請の大まかな流れは法人とそこまで変わりはありません。
「法人化していないけど、IT導入補助金を使ってみたい」「事業を開始して1年程度だけれど、事業拡大にITツールの導入を行いたい」という方は、是非この機会に利用をご検討ください。
G1行政書士法人では、これまで個人事業主の方のIT導入補助金の申請も数多くサポートさせていただきました。
また、これまでの累計採択実績は2,262件(2023年5月31日現在)を達成しており、IT導入補助金2022の採択率は90%を超えています。
個人事業主やフリーランスの方はもちろん、法人の方やITベンダー・サービス事業者の方も、「IT導入補助金を使ってみたい!」という方は当法人までお気軽にご相談ください。