IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等のみなさまが業務効率化や売上アップ、セキュリティ対策、インボイス対応を見据えた企業間取引のデジタル化などを実現するためのITツール導入経費の一部が対象となる補助金制度です。
活用する事で中小企業・小規模事業者等のみなさまには多大なメリットが生まれる制度ですが、補助金はすぐに受け取れるだろうと思っている方も少なくないと思います。
IT導入補助金は、申請が採択された後~補助金を受け取るまでの間にも必要となる手続き「事業実績報告」があり、その提出が義務付けられています。今回はその点を中心に解説していきます。
実績報告とは?IT導入補助金の流れ
実績報告とは、補助金の交付決定後に、補助事業者とIT導入支援事業者による作成・提出が義務付けられている報告のことです。
まずはIT導入補助金の全体の流れをみながら、実績報告の位置付けを確認しましょう。
<事業準備>
- IT導入支援事業者へ補助対象事業に関する問合せ、相談等
- gBizIDプライム、SECURITY ACTIONの自己宣言IDの取得
- みらデジ経営チェックの実施
<交付申請>
- ITツールの選定及び導入するITツールの商談、見積もり等の依頼
- 申請マイページ招待
- 申請マイページ作成
- 交付申請の作成
- 交付申請の提出
- 交付決定
<事業実施>
- ITツール契約、納品、支払い
- 事業実績報告の作成
- 事業実績報告の提出
- 補助金確定通知、補助金の交付
<補助金交付後>
- ITツール導入後のアフターフォロー
- 事業実施効果報告の作成
- 事業実施効果報告の提出
引用:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
申請が採択された段階は、上記の「交付決定」です。
申請が採択された後~補助金を受け取るまでの間に必要となる手続きは<事業実施>にある内容ですので、ここからはその詳細を解説していきます。
事業実施の内容【ITツール導入・事業実績報告】
IT導入補助金の採択(交付決定)後の手続き内容は以下の通りです。
ITツール契約、納品、支払い
補助事業者(申請者)とIT導入支援事業者(対象ITツールの販売企業)との間で、対象ITツールの契約・納品・支払いなどを進めるステップです。
IT導入補助金は、採択(交付決定)後に契約などを着手する必要があると定められており、採択(交付決定)より前に対象ITツールの契約や支払いを進めてしまうと補助金が受け取れなくなってしまいますので、ご注意ください。
事業実績報告の作成
IT導入支援事業者(対象ITツールの販売企業)との間で契約・納品・支払いなどを全て完了させたあと、補助事業者(申請者)が申請マイページ上で事業実績報告の作成(入力・資料添付)を行います。
この事業実績報告は、「通常枠(A・B類型)」「 セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」すべての枠組みで報告が義務付けられています。
この事業実績報告には非常に重要な手続きとなり、提出が必要な資料がいくつかありますので、そちらについては別途解説します。
事業実績報告の提出
作成した事業実績報告を事務局へ提出するステップです。
前述の補助事業者(申請者)が事業実績報告を申請マイページにて作成(入力・資料添付)したあと、IT導入支援事業者(対象ITツールの販売企業)がIT事業者ポータルで内容の確認・入力した上で、最終的に補助事業者(申請者)から事務局へ提出する流れとなります。
事業実績報告は提出期限が設けられており、必ずその期限までに提出しなければなりませんので、ご注意ください。
補助金確定通知、補助金の交付
提出した事業実績報告の事務局確認を経て、次のステップは補助事業者(申請者)による事務局の確定検査を承認する手続きです。
確定検査を承認すれば、補助金の確定通知が発行されて補助金の交付(入金)を待つ形になります。
事業実績報告は提出後に事務局が内容をチェックしますので、そこで資料不足や入力相違などが発覚した場合は、不備として訂正の依頼が発生します。
不備になった場合は、事務局の指摘を解消して事業実績報告の作成、事業実績報告の提出を改めて対応する必要があります。
また、訂正に関しても提出期限が設けられますので、事業実績報告の提出と同様にその期限までに提出する必要があります。
事業実績報告で提出が必要な資料
「事業実績報告」は、申請したITツールの契約・納品・支払いなどが全て完了した報告となり、事務局の指定する証拠資料を提出する必要があります。
事業実績報告で提出が必要な証拠資料は以下の通りです。
- 請求書(請求明細書)
- 支払証憑
- ソフトウェア利用の証憑
- 補助金を受け取る口座の資料
- [ITツールがECサイトの場合]制作したECサイトのキャプチャ
- [セキュリティ対策推進枠の場合]契約書または利用申込書
- [ハードウェア導入の場合]納品書および導入後の写真
事業実績報告に必要な書類①
請求書(請求明細書)
「事業実績報告」で提出が必要な資料の1つ目は、IT導入支援事業者(対象ITツールの販売業者)から、補助事業者(申請者)宛てに発行された請求書(請求明細書)です。
請求書(請求明細書)には以下の情報が記載されている必要があり、「事業実績報告」においては、資料の項目不足や記載不備などが無いようにする事がとても大切です。
請求書に記載が必要な項目 |
確認点・注意点 |
請求日 |
契約日以降、支払日以前であること |
請求元情報 |
IT導入支援事業者名(対象ITツールの販売業者)と完全一致していること |
請求先名 |
補助事業者名(申請者)と完全一致していること |
請求金額(合計) |
税抜、税込額が明確であること |
ITツール名 |
採択(交付決定)を受けた対象ITツールと同じことが読み取れること |
数量 |
複数のITツールを一式で表記しているものは認められません |
請求金額(単価) |
値引きを含む場合は値引き前後の単価が明確であること |
参照:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
注意点として、請求書(請求明細書)に値引きが表示されている場合は、各ツール、製品ごとの単価と値引き額、値引き後の単価が記載されている必要があります。
合計金額に対して一括した値引き金額と、値引き後の合計金額しか記載のない、単価内訳が判別できない請求書(請求明細書)は認められません。
事業実績報告に必要な書類②
支払証憑
事業実績報告に必要な書類の2つ目は、IT導入支援事業者名(対象ITツールの販売業者)へ支払った証拠資料です。
IT導入補助金の支払い方法は、「口座→口座への振込」か「クレジットカード払い(1回払いのみ)」のどちらかしか認められていません。
それぞれ事業実績報告で提出必要な資料は以下の通りとなります。
口座→口座への振込
以下の情報がわかる資料の提出が必要です。
支払証憑に記載が必要な項目 |
確認点・注意点 |
金融機関名 |
利用した金融機関名が読み取れること |
振込日 |
請求日以降、実績報告日以前であること |
振込元情報 |
振込元の口座情報(金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義人)が確認できること ※「振込依頼人」や「連絡先名」は口座名義ではありません |
振込先情報 |
IT導入支援事業者名(対象ITツールの販売業者)と一致していること |
振込金額 |
ITツールの請求金額以上の金額が支払われていること |
振込が完了していること |
振込の完了が確認できること |
口座→口座へ振込を行っていること |
補助事業者(申請者)名義の口座から振込が行われていること ※現金による振込は認められません |
参照:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
前述の事務局指定情報を満たす資料として、以下4点を提出するのが最適です。
- IT導入支援事業者名(対象ITツールの販売業者)へ支払った口座の通帳表紙
- 上記の通帳表紙をめくった1~2ページ
- 該当の振込が記帳されている通帳取引ページ
- 振込手続きした際の振込明細(以下のいずれか)
- ATMでの振込:ATMの利用明細控え
- 金融機関窓口振込:振込依頼書等の控え
- ネットバンキング振込:振込内容の詳細画面キャプチャ(スクリーンショット)
また、情報を満たす他に以下のような注意点もあります。
- 項目名含め全体が鮮明に見える必要がありますので、一部切り取りや見切れた状態の資料を提出した場合は不備になる可能性が高くなります。
- 4つ目に記載した「振込手続きした際の振込明細書」について、ネットバンキング振込の場合は、振込画面が限られた期間または件数しか表示できない事が多いため、振込画面のキャプチャ(スクリーンショット)は振込後すぐに取得・保存しておく事をお勧めします。
補足として、通帳発行の無いネット銀行などの場合は、通帳の代わりに該当情報の画面キャプチャ(スクリーンショット)でも代用可能です。
クレジットカード払い
クレジットカード払いの場合は、クレジットカードの利用明細の提出となり、必要な情報は以下の通りです。
支払証憑に記載が必要な項目 |
確認点・注意点 |
クレジットカードの名義人情報 |
補助事業者名(申請者)と一致すること |
利用日 |
請求日以降であること |
利用金額・請求金額 |
ITツールの請求金額以上の金額が支払われていること |
引き落とし口座情報 |
個人事業主:事業主名義の口座であること 法人:法人名義の口座であること |
利用内容 |
導入したITツールの内容、IT導入支援事業者名(対象ITツールの販売業者)、1回払いであることが確認できること ※リボ払い、分割払いは認められません。 |
参照:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
クレジットカードの利用明細についても、項目名含め全体が鮮明に見える必要がありますので、一部切り取りや見切れた状態の資料を提出した場合は不備になる可能性が高くなります。
事業実績報告に必要な書類③
ソフトウェア利用の証憑
続いて必要となるのは、導入したITツールのソフトウェア画面キャプチャ(スクリーンショット)です。
画面キャプチャ(スクリーンショット)上に必要な情報は以下の通りです。
画面キャプチャに記載が必要な項目 |
確認点・注意点 |
ソフトウェア名 |
ITツール名(ソフトウェア名)が読み取れること |
補助事業者名(申請者) |
利用者が補助事業者(申請者)であることが確認できること |
参照:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
補助事業者名(申請者)が表示される画面のないソフトウェアの場合は、ソフトウェア画面キャプチャ(スクリーンショット)と、以下の情報が読み取れる契約書をセットで提出する事が認められています。
記載が必要な項目 |
確認点・注意点 |
ITツール名(ソフトウェア名) |
採択(交付決定)を受けた対象ITツールと同じことが読み取れること |
補助事業者名(申請者) |
補助事業者名(申請者)とIT導入支援事業者名(対象ITツールの販売業者)との契約である事が読み取れること |
IT導入支援事業者名(対象ITツールの販売業者) |
参照:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
事業実績報告に必要な書類④
補助金を受け取る口座の資料
共通で提出必要な資料の最後は、補助金を受け取る口座の資料です。
記載が必要な情報は以下となりますが、基本的に以下2点の提出で問題ありません。
- 通帳の表紙
- 通帳表紙をめくった1~2ページ
口座情報に記載が必要な項目 |
確認点・注意点 |
金融機関名 |
補助事業者(申請者)名義の口座以外で補助金を受け取る事はできません。 また、法人における商号の変更や、個人事業主における姓の変更があった場合は、変更後の名義の口座である必要があります。
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金融機関コード |
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支店名 |
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口座種別(普通・当座など) |
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口座番号 |
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口座名義 |
参照:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
注意点として、「補助事業者(申請者)名義の口座」とある通り、法人での申請の場合は法人名義の口座が必要です。
法人の代表者個人名義の口座で補助金を受け取ることはできません。
事業実績報告に必要な書類⑤
[ITツールがECサイトの場合]制作したECサイトのキャプチャ
対象ITツールがECサイトの場合は、制作したECサイトのキャプチャ(スクリーンショット)の提出が追加で必要です。
提出が必要な画面は決まっており、以下の各画面のURL表示(アドレスバー)が見えている状態のキャプチャ(スクリーンショット)を取得して提出する必要があります。
- 制作したECサイトの TOPページ
- 特定商取引法に基づく表記ページまたは会社案内ページ
※補助事業者(申請者)の所有サイトとわかる画面
- 商品購入完了までの一連の画面
※商品一覧~商品をカートに入れたページ~電子決済~購入完了まで一連の全画面
- ECツール(ショッピングカート)の管理画面
ECサイト追加資料の注意点は以下の通りです。
- 提出する全画面、URL表示(アドレスバー)も含めたキャプチャが必要です。
- 「③商品購入完了までの一連の画面」に記載した通り、制作したECサイト上の商品一覧からはじまり、カートに商品を入れた状態~実際に電子決済を行ったうえで、購入完了まで一連の全ての画面キャプチャ(スクリーンショット)が必要です。
- 電子決済(クレジットカード決済等)を利用できるようにする必要があります。
電子決済が利用できない状態(銀行振込だけなど)だと制作が完了していないと判断されます。
事業実績報告に必要な書類⑥
[セキュリティ対策推進枠の場合]契約書または利用申込書
セキュリティ対策推進枠で採択された場合は、対象ITツールの契約書または利用申込書の提出が必要となり、記載が必要な情報は以下の通りです。
記載が必要な項目 |
確認点・注意点 |
契約日または申込日 |
採択日(交付決定日)以降であること |
契約者名 |
補助事業者名(申請者)とIT導入支援事業者名(対象ITツールの販売業者)との契約である事が読み取れることと、利用期間がわかること |
契約内容または申込内容 |
参照:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
契約書または利用申込書は文字サイズが小さい部分もあるかもしれませんので、全体が鮮明に見えるものを準備してください。
また、一部切り取りや見切れた状態の資料を提出した場合は不備になる可能性が高くなります。
事業実績報告に必要な書類⑦
[ハードウェア導入の場合]納品書および導入後の写真
採択(交付決定)を受けた対象にハードウェアも含まれており、導入した場合はハードウェアの納品書と写真の2点を追加で提出が必要です。
納品書に記載が必要な情報は以下の通りです。
納品書に記載が必要な項目 |
確認点・注意点 |
納品日 |
契約日以降であること |
納品元情報 |
IT導入支援事業者名(対象ITツールの販売業者)と一致すること |
納品先名 |
補助事業者名(申請者)と一致すること |
ITツール名(製品名) |
付属品や周辺機器を対象とする場合、その記載があること |
数量 |
数量が明確であること |
参照:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
続いて、ハードウェアの写真は、「設置した状態のハードウェアの写真」と「ラベルの貼付の確認ができる写真」の2種類の提出が必要です。
- 設置した状態のハードウェアの写真
導入した全てのハードウェアの写真提出が必要となり、1台ごとの撮影が必要です。
また、PC・タブレット・POSレジは、ソフトウェアを起動した状態で撮影する必要があります。
- ラベル貼付の確認ができる写真
IT導入補助金で導入したハードウェアは、他の製品と区別できるようIT導入補助金の対象とわかるシール・ラベルを貼付するよう定められています。
そのハードウェアとラベルの写真を撮影して提出が必要です。
ハードウェアの写真と同様に、1台ごとの撮影が必要となり、設置した状態で文字が読み取れるサイズのラベルである必要があります。
ラベル貼付の写真は以下のようなイメージです。
引用:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
まとめ
採択(交付決定)後の事業実施や事業実績報告で提出必要な資料は以上となります。
いかがでしたでしょうか?
補助金は採択(交付決定)すれば受け取れるわけではなく、その後に対象ITツールの導入を経て、各種必要資料や情報を提出する事業実績報告の手続きを行ってはじめて、補助金が受け取れる事を理解いただけたかと思います。
特に事業実績報告で提出する資料は難しいという声も多くあがりますので、事前把握やポイント把握に本記事を活用いただければ幸いです。
G1行政書士法人では、IT導入補助金初期からIT導入支援事業者(対象ITツールの販売業者)の申請サポートを行っており、行政書士としての専門知識と、長年積み重ねたノウハウを活かして、採択実績は2,000件超、IT導入補助金2022の採択率は90%を超えています。
G1行政書士法人で申請サポートしている事業者は、公表される採択率より高い実績を残していますので、IT導入補助金を活用したい中小企業・小規模事業者等の方、またはIT導入支援事業者としての登録を検討しているIT事業者の方はお気軽にお問い合わせください。