IT導入補助金に関わる経理処理で「圧縮記帳」が適用できることをご存知でしょうか。
この記事では、資金繰りの一助となる圧縮記帳の概要や仕訳方法、並びに注意点などについて解説いたします。
※実際の対応に際しましては、お取引の会計事務所や税理士の先生などにご相談ください。
圧縮記帳とは
圧縮記帳とは、簡単に言うと「補助金等を利用して固定資産を購入した場合、その年の課税負担を軽減し、翌年度以降に繰り越すことができる」という制度です。
IT導入補助金を利用する大きなメリットは、ITツール導入時の自己負担額を軽減できるという点です。
ですが、実は受け取った補助金は課税対象として計上されるため、結果的に補助金で受ける恩恵が少なくなってしまうケースがあります。
そこで補助金が交付された年の税負担を抑えるために活用されるのが、圧縮記帳です。
補助金の交付金額に合わせた圧縮額を圧縮損として計上することで、課税所得を抑えることができるため、その年の課税負担を減らすことが可能になります(具体的な方法については後述します)。
導入するITツールの種類にもよりますが、IT導入補助金は金額が大きい場合も多いため、自社の状況に合わせてこの圧縮記帳を活用すれば、資金繰りの一助になると言えるでしょう。
圧縮記帳の方法
圧縮記帳には、直接減額方式と積立金方式の2つがあります。
どちらの方法を取るかは、それぞれの特徴を踏まえたうえで会計事務所や税理士の先生などにご相談ください。
直接減額方式
直接減額方式とは、受け取った分の補助金を損金経理として計上し、固定資産の取得原価を直接減額する方法です。
取得原価を圧縮し、翌年度以降はそれに基づき減価償却を行うという仕訳方法になるためわかりやすいというメリットがあります。
一方で、固定資産の取得価額を直接減額するため、帳簿価額が実際よりも低くなってしまうという短所があります。
積立金方式
積立金方式は、受け取った補助金額を圧縮積立金として計上する方法です。
直接減額方式とは異なり、固定資産から取得原価を直接減額はしないため、固定資産が元々の簿価になり損益計算書上の数値に指し響かない、という利点があります。
ただし、積み立てた分の金額を取り崩した場合別途計上が必要になるなど、仕訳方法が煩雑になりがちであるという点に、注意が必要です。
メリット
圧縮記帳を利用する大きなメリットは、前述のとおり「補助金が交付された年の税負担が減る」という点です。
これにより、その年の補助金の効果を薄めることなく、余裕を持った事業経営や資金繰りを行うことが可能になります。
注意点
圧縮記帳の概要やメリットをお伝えしましたが、注意が必要な点もいくつか存在しますので、ここからは圧縮記帳で気を付けたい事項を紹介いたします。
対象となる条件や経費が定められている
圧縮記帳は、どのようなケースでも適用できるわけではなく、対象となる条件や経費が決められています。
適用可能なケースはいくつかありますが、補助金の交付を受けた場合に圧縮記帳を適用できる条件は、基本的に「固定資産の取得費用」が補助金対象の場合のみとなります。
IT導入補助金はクラウド利用料や役務(導入コンサルティング、導入設定・マニュアル作成・導入研修、保守サポートに係る費用)なども補助金の対象にできる制度となっていますが、こういった固定資産以外の経費には圧縮記帳を適用することはできません。
また、他にも下記のような条件が法人税法上定められています。
- 国または地方公共団体から受け取る補助金、給付金、あるいはこれらに準ずるもので政令に定めるもの(法人税法上は「国庫補助金等」という)の交付を受けること
- 国庫補助金等をもって交付された事業年度に固定資産の取得や改良に充てたこと
- 国庫補助金等が交付された事業年度の末日までに国に返還不要が確定したこと
- 国庫補助金等を受け取った法人が清算中でないこと
- 法人税計算の基礎となる会計処理上も圧縮記帳を行っていること
- 法人税の確定申告書に圧縮記帳に関する明細書を添付していること
他にも、
- 税額控除と圧縮記帳の併用はできない
- 補助を受けることになった固定資産の取得金額までしか、圧縮記帳できない(圧縮記帳できる金額に上限がある)
など、対象となる要件や費用が細かく規定されているため、圧縮記帳の適用を検討する際は自社の状況等と合わせて必ず会計事務所や税理士の先生など、専門家に確認を行うようにしましょう。
税金の額そのものは変わらない
2つ目の注意点は、「圧縮記帳をしても、納税額そのものは変わらない」ということです。
あくまで、その年の補助金に対する課税が軽減してその分は翌年以降に繰り越される、という制度のため、圧縮記帳をしたからといって免税や減税がされるわけではありません。
また、繰り延べした分次年以降の税負担は増えるという点も念頭に置いたうえで、圧縮記帳を利用するかどうかを検討するといいでしょう。
まとめ
今回は、圧縮記帳の概要や方式、注意事項などをお伝えしました。
資金繰りについては多くの事業者が頭を悩ませる問題になるかと思いますが、今回ご紹介した記事が補助金利用時の事業経営の一助になれば幸いです。
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