IT導入補助金2023の申請枠・類型には、通常枠(A・B類型)、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)、セキュリティ対策推進枠など、複数の申請枠・類型があります。
その中で、最も多く利用されているのが、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)です。
当サイトを運営するG1行政書士法人でも、前年度(令和4年度)1,509件の申請サポートのご依頼を頂き、事業者の皆様のご関心の高さを実感しています。(採択件数:1,378件、採択率:90.9%)
そこでこの記事では、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)ついて、対象となるITツールや経費、補助額・補助率、申請の流れについて、詳しく説明します。
目次
1.デジタル化基盤導入類型とは
デジタル化基盤導入類型の事業目的
IT導入補助金は全体として、中小企業・小規模事業者のITツール(ソフトウェア、サービス等)導入にかかる経費の一部を補助する補助金ですが、申請枠・類型ごとにそれぞれ異なる事業目的が設定されています。
デジタル化基盤導入類型では、通常枠にも共通する「生産性向上」(業務効率化や売上アップ)に加え、特に「インボイス制度対応」も見据えた「企業間取引のデジタル化」が、事業目的に挙げられています。
これを強力に推進するため、「通常枠」よりも補助率が高く設定されており、優先的に支援されるようになっています。
インボイス制度とは
このデジタル基盤導入類型においてポイントになってくるのが、2023年10月より導入される「インボイス制度」です。
インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除の方式で、この制度下において買手が仕入税額控除を受ける際に必要となるのが、インボイス(適格請求書)です。
インボイスとは、売手が買手に正確な適用税率や消費税額などを伝えるための書類やデータのことで、具体的には、「登録番号」「適用税率」「消費税額」など一定の事項を記載した請求書や領収書等のことを指します。
売手は買手の求めに応じ発行が必要となり、売手・買手ともにその保存が必要です。
デジタル化基盤導入類型とインボイス制度の関係
インボイス制度にスムーズに対応するには、請求書や領収書などの様式を変更したり、正しく保存・管理する体制を整える必要があります。その際に役立つITツールが、デジタル化基盤導入類型で対象となっている「会計・受発注・決済・EC」の機能を持つITツールです。
中小企業・小規模事業者や個人事業主の方が、この補助金を活用し、できるだけ少ない費用でインボイス制度に対応できるように支援しようというのが、デジタル化基盤導入類型の事業目的の特徴になっています。
デジタル化基盤導入類型で補助対象となるITツール
IT導入補助金全体において、補助対象として申請するITツールは、IT導入支援事業者が事前に事務局に登録したものの中から選択する必要があります。
その上で、デジタル化基盤導入類型で補助対象となるITツールは、「会計・受発注・決済・EC」の機能を持つソフトウェアとそのオプション・役務・ハードウェアです。
様々な機能を持つITツールを幅広く対象とする通常枠に対して、デジタル化基盤導入類型では、インボイス対応に資するとされるこれら4機能を持つITツールに、対象を限定しています。
各機能に対するITツールの具体例として、下記のようなものが挙げられます。
- 「会計」:仕訳、各種出納帳、総勘定元帳、試算表や財務三表(BS、PL、CF)をデジタル作成できるもの。freee、マネーフォワード、弥生会計などが有名
- 「受発注」:売り手側機能として売上請求管理、売掛・回収管理や電子記録、債権・手形管理、買い手側機能として仕入管理(仕入明細)、買掛・支払管理等の機能があるもの
- 「決済」:ECサイトに付帯するカード決済やその他の決済機能、売上等のデータをデジタル管理できるPOSレジなど
- 「EC」:商品販売などの商取引をオンライン上で行えるウェブサイト
ツール選びの注意点
- オプションや役務、ハードウェアのみでの申請は、補助対象になりません。ITツールは、会計・受発注・決済・ECの機能を1種類以上持つ「ソフトウェア」を含んでいる必要があります。
- パソコンやタブレットなどのハードウェアについても、ソフトウェアの購入先と同じIT導入支援事業者から購入しないと、補助対象になりません。
- ソフトウェアの使用と無関係、またはその継続的な利用にあたって必要最低限以上のハードウェアは、補助対象になりません。
なお、ITツールを提供するITベンダー・サービス事業者の方が、IT導入支援事業者としてツールを登録する際の要件は、更に細かく設定されています。詳しくはIT導入補助金2023公式サイト「ITツール登録要領」をご確認ください。
デジタル化基盤導入類型で補助対象となる経費
補助対象となる経費は、ソフトウェア、オプション、役務の導入費用と、ハードウェアの購入費です。
ただし、これらに該当するものであっても、リース契約のものであったり、交付(採択)決定前に購入したものである場合など、対象外となる条件がありますので、詳しくは公募要領をご確認ください。
ソフトウェア、オプション、役務
ソフトウェアについては買取購入費のほか、月額・年額制の製品・サービス(サブスクリプション形式等)の利用料最大2年分も対象になります。またその保守費用についても、ソフトウェアの利用範囲内で最大2年分、オプションに対しては最大1年分が対象です。
パソコンやタブレットなどハードウェア購入も可能
通常枠では対象外となっているハードウェア(PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機)やPOSレジ、モバイルPOSレジ、券売機の購入費も、デジタル化基盤導入類型では対象になります。
ただし前提として、補助対象経費となるソフトウェアの導入と併せて購入するものであり、かつその使用に資するものであることが条件です。
デジタル化基盤導入類型の補助額・補助率
補助額 |
ITツール |
PC・タブレット等 |
レジ・券売機 |
|
(下限なし)~350万円 |
~10万円 |
~20万円 |
||
内、~50万円以下部分 |
内、50万円超~350万円部分 |
|||
機能要件 |
会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 |
会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 |
左記ITツールの使用に資するもの |
|
補助率 |
3/4以内 |
2/3以内 |
1/2以内 |
2.デジタル化基盤導入類型の交付申請の流れ
まずはIT導入補助金公式サイトに掲載の、デジタル化基盤導入類型版の公募要領をよく読み、詳細要件について理解したうえで、手続きを進めましょう。
通常枠等とも共通しますが、大まかな流れをご説明します。
補助の対象となる事業者の定義と申請要件を理解する
1. 中小企業・小規模事業者等であること
IT導入補助金の場合、業種・組織形態ごとに資本と従業員数で以下の表のように定義されています。医療法人、社会福祉法人、学校法人等でも条件を満たしていれば、補助対象になります。
小企業等の定義
業種・組織形態 |
資本金 |
従業員 |
|
(資本の額又は |
常勤 |
||
資本金・従業員規模の一方が、 |
製造業、建設業、運輸業 |
3億円 |
300人 |
卸売業 |
1億円 |
100人 |
|
サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) |
5,000万円 |
100人 |
|
小売業 |
5,000万円 |
50人 |
|
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業 並びに工業用ベルト製造業を除く) |
3億円 |
900人 |
|
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 |
3億円 |
300人 |
|
旅館業 |
5,000万円 |
200人 |
|
その他の業種(上記以外) |
3億円 |
300人 |
|
その他の法人 |
医療法人、社会福祉法人、学校法人 |
– |
300人 |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 |
– |
100人 |
|
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 |
– |
主たる業種に記載の従業員規模 |
|
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 |
– |
主たる業種に記載の従業員規模 |
|
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) |
– |
主たる業種に記載の従業員規模 |
|
特定非営利活動法人 |
– |
主たる業種に記載の従業員規模 |
小規模事業者の定義
業種分類 |
従業員 |
常勤 |
|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) |
5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 |
20人以下 |
製造業その他 |
20人以下 |
引用:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
2. 申請要件を満たしていること
申請には、細かい要件が設けられていす。要件を満たしていなくても、気づかずに申請できてしまう項目もありますが、審査の結果不採択となってしまいますので、必ず事前に確認しましょう。
下記にそれらの一部をご紹介します。
- 日本国内で法人登記(法人番号が指定され国税庁が管理する法人番号公表サイトにて公表されていること)され、日本国内で事業を営む法人、又は個人であること
- 交付申請の直近月において、申請者が営む事業場内最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること
- gBizIDプライムと、「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」又は「★★ 二つ星」いずれかの宣言を取得していること
- 「みらデジ経営チェック」を交付申請前に行った事業者であること
IT導入支援事業者とITツールを選択する
IT導入支援事業者とは、補助事業を申請者とともに実施する、補助事業を実施するうえでの共同事業者(=パートナー)です。IT導入補助金では、他の補助金とは異なり、IT導入支援事業者と協力して申請をする必要があります。
各種ソフトウェア・サービスの提供事業者やECサイトの制作会社等、ITツールを提供できる事業者が、IT導入補助金の事務局に事前に審査を受け、IT導入支援事業者として登録されています。
このIT導入支援事業者から、ITツールの提案・導入や、経営診断ツールを利用した事業計画の策定の支援、各種申請等の手続きのサポートを受けることになりますので、まずはどのIT導入支援事業者をパートナーにするか、選びましょう。
またITツールに関しても、IT導入支援事業者が事務局に登録し、認定を受けたものの中から選択する必要があります。
自社の経営課題や生産性向上に必要な取り組み、インボイス制度への対応状況等について、IT導入支援事業者と相談の上、適切なITツールを選定しましょう。
交付申請に必要な書類などを準備する
交付申請を行うにあたって、下記のような書類と事前手続きが必要になります。注意点など詳しくは、下記ページでもご紹介しています。
交付申請に必要な書類
〈法人〉
- 実在証明書:発行から3ヶ月以内の履歴事項全部証明書
- 事業実態確認書類:税務署発行の直近分の法人税の納税証明書 「その1」または「その2」
〈個人事業主〉
- 本人確認書類:発行から3ヶ月以内の運転免許証または運転経歴証明書または住民票
- 事業実態確認書類1:税務署発行の直近分の所得税の納税証明書 「その1」または「その2」
- 事業実態確認書類2:税務署が受領した直近分の確定申告書の控え
その他交付申請に必要なもの
- 「gBizIDプライム」アカウントの取得
- 「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」又は「★★ 二つ星」いずれかの宣言を取得
- 「みらデジ」の「経営チェック」の実施
交付申請から補助金交付後までの流れ
交付申請から補助金交付後までの大まかな流れは、以下のようになっています。
- 交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
- 事務局審査
- 交付決定通知(採択)
- 補助事業の実施(ITツールの発注・契約・支払い)
- 事業実績報告
- 補助金交付手続き
- 事業実施効果報告
詳しくは下記ページもご参照ください。
IT導入補助金の申請方法とは?申請準備から交付後の流れまでを分かりやすく解説!3.まとめ
IT導入補助金2023の申請枠・類型の中で最も多く利用されている、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)について、他の申請枠との違いや特長、申請するにあたっての要件から実際の手続きフローまでを詳しくご紹介しました。
デジタル化基盤導入類型は、インボイス制度への対応など企業間取引のデジタル化を推進することを目的としており、「通常枠」よりも補助率が高い点が大きなポイントです。
G1行政書士法人では、それぞれの申請枠・類型の特性を踏まえ、実績と経験に基づいたサポートを提供しています。デジタル化基盤導入類型への申請をご検討されている方は、ぜひご相談ください。