IT導入補助金のITツール
IT導入補助金は、様々なシステムやソフトウェアの導入に活用する事が可能なため、それらを提供するIT事業者の方にとって、顧客のコスト負担を軽減し導入のハードルを下げることができるという、大きなメリットがあります。
ただし、IT導入補助金を活用するためには、IT導入支援事業者登録だけでは、まだIT導入補助金を活用して顧客に提案する事はできません。
IT導入補助金を活用するには【ITベンダー・サービス事業者編】IT導入支援事業者登録が完了すれば、次に補助金を活用したい自社の提供サービスの「ITツール」への登録が必要となります。
これまでのIT導入支援事業者様からのご質問も非常に多くありますが、このITツールの登録の方法によっては、IT導入補助金の採択にも影響するため、制度の意味を理解した上でITツールの登録が必要となります。
IT導入補助金は審査制(採択制)となっていますが、同じITサービスであったとしても、ITツールの登録方法によっては、採択率に差が出る事も考えられます。
そのためIT導入支援事業者様はこのITツールの設計から採択を見据えて根拠を明確にして、審査員に理解いただけるように登録の準備を実施していく事が重要と当法人では考えています。
では、ITツールについて、概要を紹介していきます。
本サイトでは、わかりやすく理解いただくために、言葉の言い回しなどの表現を変更して表記しています。
ITツールとは
自社の提供サービスに対してIT導入補助金を使えるようにするためには、各サービスを「ITツール」として事前審査にて登録する必要があります。
この事前審査にて登録されたITツールに対して補助金を受ける事が可能となります。
主な登録する業務プロセス
- 業種・プロセス一覧
①顧客対応・販売支援②決済・債権債務・資金回収管理③供給・在庫・物流④会計・財務・経営⑤総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス⑥業種固有プロセス(業種別:20種類)⑦汎用・自動化・分析ツール
となります。
基本的には、上記の①~⑦の業務プロセスに対して、自社の提供サービスをどのように当てはめて登録するかがポイントになります。
※対象とする業種によって、詳細内容が変わります。
そして、このITツールを顧客が導入する事で、パフォーマンス、生産性が向上する事が必要となりますので、自社のサービスがどのような効果を発揮できるのかを事前に検討する事が必要となります。
ITツールによる効果
顧客がITツールを導入する事で効果性が見込めると判断されるとITツールの登録が認められます。
その効果とは、様々分類出来ますが、事務局が定義している効果性として、「労働生産性」が挙げられます。
IT導入補助金が定義する労働生産性
労働生産性=付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)÷(従業員数×年間の勤務時間平均(1人あたり))
「IT導入補助金2023 ITツール登録要領」サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局より抜粋)
この労働生産性が向上すると見込めるITツールが登録対象となります
この内容を見た際に、「自社のサービスってITツールに登録できるのかな?」と考えられるIT事業者様も多くいらっしゃいますが、既に提供されているサービスで、顧客から評価があるのであれば、何かしらの労働生産性向上が実現できているため、難しく考える必要はなく、ITツールへ登録申請していただいても問題はないと考えられます。
また、IT導入補助金事務局では様々な労働生産性の向上内容を定義しています。
ITツールの労働生産性向上内容
提供するサービスがIT導入補助金上で、どのようにパフォーマンス・生産性向上につながれば良いのかを見ていきます。
・事業者の生産性向上を図る事を目的とする
IT導入補助金2023(令和5年度)では、今後複数年にわたり直面する制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)に対応する事が前提にあります。
また、ITツールの登録方法でも求められていますが、「点ではなく面での生産性向上」がキーワードとなっているため、先程挙げた「①~⑦の業務プロセス」に対し、複数の観点から生産性向上を見込めるサービスである事が求められています。
が挙げられます。
自社が提供するサービスがどのような効果を発揮出来るのかを検討して、ITツールの登録準備を進めて下さい。
ITツールの登録
そして、ITツールを登録するために、事務局が用意している必要な項目に対して登録していく流れになります。
ここでは、ITツールの登録にあたって、主な項目を挙げています。
主なITツールの主な登録内容
・カテゴリーへの登録
こちらの登録が主要となるITツールになります。
自社のサービスを以下のカテゴリーから、
- ソフトウェア(ソフトウェア)
- オプション(機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ)
- 役務(導入コンサルティング、導入設定・マニュアル作成・導入研修、保守サポート)
から選択し、登録します。
先程挙げた、①~⑦の業務プロセスは「ソフトウェア(ソフトウェア)」にて登録するため、ソフトウェア登録はマストで実施する必要があります。
そして、オプション、役務は自社が提供するサービスの必要性に応じて、登録を実施します。
・保有する業務プロセスの選択
ITツールが対象とする「業種」とその「保有する業務プロセス」を登録します。
業種は、事務局が定めている、
- 農業・林業・漁業
- 建設業・土木業
- 製造業
- 情報サービス業
- 運輸業
- 卸売業
- 小売業
- 保険業・金融業
- 不動産業
- 物品賃貸業
- 専門・技術サービス業
- 宿泊業
- 飲食業
- 生活関連サービス業
- 教育・学習支援業
- 医療業
- 介護業
- 保育業
- その他サービス業
- 上記に分類されない業種
の20種類となります。
上記の代表業種別に細かく業種が分類されています。自社のサービスがどの業種に対し対応するのかを事前に確認をしておく事をお勧めします
そして、その業種に対して「保有する業務プロセス」を登録します。
保有する業務プロセスに関しては、業種によって様々あって、違いがあるため、ここでは割愛しておきますが、大枠のポイントとして、
7の業務プロセス
- ①顧客対応・販売支援②決済・債権債務・資金回収管理③供給・在庫・物流④会計・財務・経営⑤総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス⑥業種固有プロセス(業種別:20種類)⑦汎用・自動化・分析ツール
に分類され、それぞれ該当する項目に対して登録します。
各保有する業務プロセスの一例(小売業の場合)
①顧客対応・販売支援
トラッキング機能(潜在顧客属税情報・行動履歴収集・分析)
リード管理(潜在顧客育成・潜在顧客選別)
SFA:見込客情報・案件情報・商談進捗・営業販促活動・営業管理等実績管理
CRM:顧客購買履歴・対応履歴全社共有・顧客分析・販促・アフターケア機能
予約受付台帳
無人受付、無人チェックイン
②決済・債権債務・資金回収管理
決済(POSレジ、券売機システム、多通貨対応)
発注・仕入・買掛・支払管理
受注・売上請求管理、売掛・回収管理
電子記録債権・手形管理
採算管理(売上分析、粗利管理)
③供給・在庫・物流
取引条件管理(取引先、納入条件)
ロケーション管理、入出庫管理、実地棚卸管理、検品受入
在庫分析、在庫基準
納品管理(納品先、納品期限、納品商品、配送状況確認等)
配送業者管理、配送計画、納品手続処理
④会計・財務・経営
予算統制、資金繰り計画、CMS(キャッシュ・マネジメント)
仕訳、各種出納帳、総勘定元帳、残高試算表、財務三表(B/S、P/L、C/F)
固定資産台帳、減価償却計算
経費精算
法廷調書、税務申告書作成
管理会計、経営分析
⑤総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス
出退勤申請・管理
シフト作成(シフト希望収集・計画作成)、36協定、長時間労働等(レギュレーション対応)
給与計算、有給計算・管理、社会保険計算、年末調整計算
人事基本台帳、人事評価
採用(採用応募者管理、面接スケジュール管理)・処遇・移動・退職手続、労務契約管理
ストレスリスクの自動検知、ストレス診断・アンケート、ストレス要因可視化、改善計画策定、福利厚生管理
社内向け研修ツール(階級別研修・セキュリティ研修・技術研修・eラーニング作成・配信機能)
電子契約、リーガルチェック、BCP支援、ISP管理
社内資産管理(器具、備品、ファシリティ、IT資産、MDM、機器管理等)
⑥業務固有プロセス
※以下業種別で詳細のプロセスあり
MD支援(売れ筋商品分析、棚卸管理、販促予測・商品タグツール)
賞味期限管理、検品・破棄管理、リスクアセスメント
品質管理
標準商品規格書(作成、依頼・回収)
クレジット・ローンシミュレーション
トレーサビリティ管理
FC・代理店・販売店管理(本部機能/支店運営・売上状況、支店機能/本部報告機能)、リスクアセスメント
⑦汎用・自動化・分析ツール
文書作成ワープロソフト、表計算ソフト、簡易データベースソフト、プレゼンテーションツール、メールソフト
文章証憑管理ソフト、OCR、PDF、ペーパーレス化ツール
ワークフロー、グループウェア、コラボレーションツール、社内SNS、社内チャットツール
CTI、PBX、IVR
WEB会議システム、リモートデスクトップ、シンクライアント
ビジネスアプリツール
共同作業機能等が付加されたオンラインストレージサービス
RPA、チャットボットシステム
BI、分析・解析専門ツール
IT導入補助金に採択されるためには、保有する業務プロセスが1つ以上登録されたITツールの導入が必要となります。
そのため、ITツール登録時には、保有する機能を1つ以上登録する事が必要となります。
※A類型(申請補助額:5万~150万円未満)は上記①~⑥までで1つ以上の登録が必要、⑦のみのプロセス登録では申請不可
※B類型(申請補助額:150万~450万円以下)は、上記①~⑥までで4つ以上の登録が必要 ⑦のみのプロセス登録では申請不可
※デジタル化基盤導入類型(申請補助額:下限なし~350万円)は上記①~⑥までで1つ以上の登録が必要、⑦のみのプロセス登録では申請不可
上記を踏まえて、ITツールの登録内容の設計を検討します。
ITツールの登録方法
ITツールの登録する内容を設計が出来れば、実際にITツールの登録申請を実施します。
登録方法としては、IT導入支援事業者のアカウント(管理画面)から事務局側が用意しているフォーマットに沿って登録・申請します。
予め登録の設計が出来ていれば、登録申請する所要時間は10分ほどで完了します。
また、登録に対して、
- ITツールに登録するサービスの紹介がわかるURL、資料
- 導入実績数
などが準備出来ていれば、スムーズに申請する事が可能です。
ただ、ITツールは登録申請すれば、自動で登録できるものではなく、すべてのITツールに審査が入ります。
審査要件は様々ありますが、ITツール登録対象外でなく、全体的な矛盾が生じていなければ、基本的には登録が出来るような仕組みとなっています。
申請するITツールに対して、説明が不十分なものであったり、ITツールの登録対象外に近いようなサービスであると、不採択となります。
そうなると、再度申請のやり直しとなるため、登録が完了するまで時間がかかります。
スムーズにいけば、10日ほどで登録が完了しますが、何度もやり直しになると、登録までに2週間~3週間ほど時間がかかってしまう場合もあります。
そのため、スムーズに申請完了するためにも予め準備を進めていただく事をおすすめしています。
そして、見事ITツールとして登録されれば、事務局がオフィシャルで運営しているWEBサイト上で登録内容が公開され、検索できるようになります。
これは、余談ですが、IT導入補助金は、全国の中小企業の事業者様が検討し、同時にIT導入補助金のオフィシャルWEBサイト内でITツールを検索するため、他社が提供していないようなサービスをITツールとして登録しておくと、思わないところから問い合わせが入ります。
そのため、登録内容に関しても可能であれば工夫を持って登録する事も一つの取り組みであると言えます。
ITツールの登録の対象外になるものがありますので以下についても確認が必要となります。
ITツール登録対象外について
以下の内容についてはITツール登録前に確認しておきたい内容です。
・入力したデータを単純計算にて帳票やグラフ・表等に印刷するまたは画面等に表示する等、単一の処理を行う機能しか有しないもの
・すでに購入済のソフトウェアに対する増台や追加購入分のライセンス費用、また既存ソフトウェアに対するリビジョンアップのための費用。
・ITツール(ソフトウェア)に、データ作成など代行サービスを含んでいる、または、役務を含んでいるもの
・ホームページと同様の仕組みのもの
・ホームページ制作ツールやブログ作成システム等で制作した簡易アプリケーション
・特定の顧客向けに限定されたもの
・フルスクラッチ開発・一部スクラッチ開発のもの
・業務プロセスに影響を与えるような大幅なカスタマイズが必要となるもの
・特定のハードウェア機器を動作させることに特化した専用システム等の組込み系ソフトウェア
・恒常的に使用されないシステム
・広告宣伝費を含んでいるもの
・単なる情報提供サービス、会員登録した利用者に対する情報提供サービスのもの
・ホームページ制作、WEBアプリ制作、スマートフォンアプリ制作、コンテンツ制作(VR・AR用、教育・教材用、デジタルサイネージ用)、単なるコンテンツ配信管理システム。
・採択者の顧客が実質負担する費用がソフトウェア代金に含まれるもの
・採択者が販売する商品やサービスに付加価値を加えることが目的のもの。
・料金体系が従量課金方式のもの
・対外的に無料で提供されているもの。
・リース・レンタル契約のソフトウェア。
ITツールの申請登録スケジュール
IT導入補助金2023(令和5年度)のITツールはいつでも登録が出来るわけではないため、登録期間内に申請する必要があります。
ITツールの登録申請 | スケジュール |
登録申請 | 2023年3月20日(月)~ 終了時期は後日案内予定 |
上記のスケジュールに応じて、申請を進めていただければと思います。
まとめ
上記のように、ITツールの登録対象外の内容もありますので、事前にどのような内容が登録対象外なのかを確認しておく事も重要であると言えます。
基本的にはITツール登録時に事務局側から不採択とされるため、登録対象外のITツールを顧客に対して提案する事はないと考えられますが、IT導入支援事業者として、事前に把握しておく事でスムーズなIT導入補助金の運用につなげたいものです。
以上にて、ITツールの申請が採択され、登録されれば、晴れてIT導入補助金を活用して顧客へ提案する事が可能となります。
ただし、ITツールの登録から、登録完了まである程度の時間がかかるため、スケジュールを逆算して顧客に対して案内・提案をしておく事をおすすめしておきます。
お気軽にご相談ください
IT導入補助金を活用したいけど、ツールの登録方法ががよくわからない、自社のITツールが対象になるか分からないなど、ご不明な点があればぜひ、お気軽にご相談ください。