2025年9月30日(火)にIT導入補助金2025の4次締切分(複数社連携IT導入枠は2次締切分)の採択結果が公表され、4次締切分の全体の採択率は40.6%と3次締切分よりは若干回復したものの、依然として採択率は低い水準が継続した結果となりました。
IT導入補助金は申請すれば全員が補助金を受け取れるというものではなく、審査を経て採択された事業者だけが対象になるため、申請者およびIT導入支援事業者は、少しでも審査を通過する可能性を高めたいと考えていると思います。
そこで今回は、IT導入補助金2025の採択結果や採択率、審査を通過するためのポイントなどを解説していきます。
目次
IT導入補助金2025の採択率
IT導入補助金は複数の申請枠があり、申請枠によって採択率や採択結果の傾向に差があります。
IT導入補助金2025の申請枠ごとの採択率は以下の通りです。
申請枠 |
申請数合計 |
採択率 |
(参考) |
通常枠 |
13,093 |
38.7% |
65.8% |
インボイス枠(インボイス対応類型) |
28,909 |
46.7% |
72.1% |
インボイス枠(電子取引類型) |
0 |
- |
100% |
セキュリティ対策推進枠 |
360 |
49.2% |
85.3% |
複数社連携IT導入枠 |
5 |
80.0% |
57.1% |
合計 |
42,367 |
44.3% |
69.9% |
前年度のIT導入補助金2024から引き続き、通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)の2枠が申請数の大半を占めていますが、両申請枠とも前年度の採択率を大きく下回る進捗となっています。
また、セキュリティ対策推進枠の申請数は前述2枠より少ないとは言え、3次締切まででIT導入補助金2024の年間申請数をすでに上回っています。
当法人では、IT導入補助金2025の採択率が低い要因は以下の影響によるものと考えています。
①例年より申請数が増加しているため採択基準に調整が入っている
②加点・減点項目の影響が従来よりも大きくなっている
これまでのIT導入補助金の採択率推移と比較しても、IT導入補助金2025は最低水準となっています。
・IT導入補助金2021採択率:59.2%
・IT導入補助金2022採択率:73.9%
・IT導入補助金2023採択率:75.9%
・IT導入補助金2024採択率:69.9%
続いて、募集回ごとの採択率は以下の通りでした。
通常枠
募集回 |
申請数 |
採択数 |
採択率 |
1次締切 |
2,979 |
1,511 |
50.7% |
2次締切 |
3,516 |
1,447 |
41.2% |
3次締切 |
3,856 |
1,174 |
30.4% |
4次締切 |
2,742 |
935 |
34.1% |
合計 |
13,093 |
5,067 |
38.7% |
インボイス枠(インボイス対応類型)
募集回 |
申請数 |
採択数 |
採択率 |
1次締切 |
6,446 |
3,710 |
57.6% |
2次締切 |
7,609 |
3,592 |
47.2% |
3次締切 |
8,270 |
3,346 |
40.5% |
4次締切 |
6,584 |
2,852 |
43.3% |
合計 |
28,909 |
13,500 |
46.7% |
セキュリティ対策推進枠
募集回 |
申請数 |
採択数 |
採択率 |
1次締切 |
7 |
7 |
100% |
2次締切 |
164 |
89 |
54.3% |
3次締切 |
75 |
31 |
41.3% |
4次締切 |
114 |
50 |
43.9% |
合計 |
360 |
177 |
49.2% |
複数社連携IT導入枠
募集回 |
申請数 |
採択数 |
採択率 |
1次締切 |
3 |
3 |
100% |
2次締切 |
2 |
1 |
50.0% |
合計 |
5 |
4 |
80.0% |
参照:IT導入補助金2025公式サイト
インボイス枠(電子取引類型)は未だ申請数がゼロ件です。
IT導入補助金2025の審査を通過するためのポイント
IT導入補助金2025の審査を通過して採択されるためには、いくつかの押さえておきたいポイントがありますので、ここからはそのポイントを解説していきます。
IT導入補助金の申請対象要件を満たす
まず大前提として、IT導入補助金2025で定義されている「申請対象としての要件を満たす」必要があります。
表面上わかりやすい要件である「従業員数」や「資本金」以外にも、申請の対象外と定義されている要件もありますので、対象外に該当していないことを確認しましょう。
例えば、以下のいずれかに該当する事業者は申請対象外と定義されているため、申請しても採択される可能性は非常に低くなります。
- 日本国内で事業を営んでいない
- 別法人または別事業者で申請しており、その時に登録した携帯電話番号と同一の番号で申請
- 申請経費の内訳として役務費用の占める割合が著しく高額
- 大企業の子会社や孫会社
- 大企業の役員や職員が役員の過半数を占めている法人
- 直近3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えている
- IT導入補助金における「みなし同一法人」による申請に該当している
- 過去1年以内に労働関係法令違反により送検処分を受けている
- IT導入補助金2024の同じ申請枠で採択されてから12か月以内
- IT導入補助金2025の同じ申請枠で申請が重複している
上記は一例であり要約した記載をしているため、詳細は公募要領をご確認ください。
申請内容をしっかり作りこむ
IT導入補助金2025の審査は、ローンなどの審査と違って個人の信用情報を照会することはないため、申請内容を基とした判断が審査結果の大半を占めます。
審査項目や審査事項の詳細は公募要領に記載されていますが、簡単にまとめると「自社の現状や強み・弱みなどを理解したうえで経営課題を認識しており、導入するITツールはその課題解決につながって労働生産性が向上する」ということを申請内容でしっかりとまとめて、審査者に伝わるようにすることが重要です。
長年、IT導入補助金の申請内容作成やサポートをおこなっており、知見やノウハウを積み重ねている専門家を活用することで、上記のようなポイントを押さえた申請内容で挑むことができるようになるため、専門家の活用は採択率向上の有効な手段になっています。
加点項目に最大限取り組む
IT導入補助金2025では、審査上で加点される項目も予め公募要領で公開されています。
IT導入補助金2025の採択結果や採択率を鑑みると、加点項目への取り組みの重要性が増している可能性が高いということもありますので、申請の際は可能な限り加点項目に取り組むことを推奨します。
加点項目は以下となり申請枠によって対象が違いますので、申請する枠の加点項目は積極的に取り組みましょう。
IT導入補助金2025加点項目 |
通常枠 |
インボイス枠(インボイス対応類型) |
セキュリティ対策推進枠 |
地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得している |
加点 |
加点 |
加点 |
地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出している |
加点 |
加点 |
加点 |
導入するITツールとしてクラウド製品を選定している |
加点 |
- |
- |
「サイバーセキュリティお助け隊サービス」のITツールを選定している |
加点 |
加点 |
※必須要件 |
インボイス制度対応のITツールを選定している |
加点 |
※必須要件 |
- |
以下賃金引上げ要件を満たす3年分の事業計画を策定して実行している |
加点 ※補助金申請額150万円以上の場合は必須要件 |
加点 |
加点 |
「デジwith」における「IT戦略ナビwith」をおこない、指定資料を提出している |
加点 |
加点 |
加点 |
令和6年度に「健康経営優良法人2025」に認定されている |
加点 |
加点 |
加点 |
えるぼし(1段階目~3段階目)またはプラチナえるぼしのいずれかの認定を受けている |
加点 |
加点 |
加点 |
くるみん、トライくるみん、プラチナくるみんのいずれかの認定を受けている |
加点 |
加点 |
加点 |
「成長加速マッチングサービス」で会員登録を行い、挑戦課題を登録・掲載中になっている |
加点 |
加点 |
加点 |
「SECURITY ACTION」の「★★ 二つ星」の宣言を行っている |
- |
- |
加点 |
※インボイス枠(電子取引類型)と複数社連携IT導入枠は一般的な申請枠ではないため割愛します。
一つ注意点として、賃金引上げの加点を受ける内容で申請した場合は、指定の時期に実施する効果報告で賃金引上げの結果を報告することになります。
この時に、賃金引上げ計画を達成できていなかった場合は、ペナルティが設定されているため、賃金引上げに取り組むかはしっかりとした検討が必要となります。
・ 加点を受けたうえで、本補助金で採択されたにも関わらず、申請した加点要件を達成できなかった場合は、効果報告において未達が報告されてから18カ月の間、中小企業庁が所管する補助金※1への申請にあたっては、正当な理由が認められない限り大幅に減点する。
※ 令和7年1月時点では、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・引継ぎ補助金、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)、事業再構築補助金(中小企業省力化投資補助事業を含む。)・ ただし、災害を受け、事業において著しい損失を受けたと認められる場合等※2により、やむを得ず加点要件を達成できなかった場合は、その限りでない。その場合には、効果報告の提出時にその理由を説明すること。事務局がやむを得ないと認めた場合に限り、減点を免除する。
※ 震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け又は盗難にあったこと等により、事業において著しい損失を受けたと認められる場合(国税通則法第46条)、その他これに準ずるものとして中小企業庁が認めた場合。
※引用:IT導入補助金2025公募要領
加点項目の詳細についてはこちらの記事もご覧ください。
IT導入補助金2025【加点項目】とは?賃金引上げの注意点等も解説
まとめ
本記事では、IT導入補助金2025の採択結果や採択率、審査を通過するためのポイントなどを解説しました。
今後も採択結果が公表されるごとに、随時本記事を更新していきます。
G1行政書士法人では、IT導入補助金開始当初から申請内容の作成や申請サポート、採択後の手続きサポートなどを提供しております。
認定経営革新等支援機に認定されている専門家としての知見と、累計実績4,500件を超えるノウハウを活かして、より採択につながるサポートを提供しておりますので、申請に興味がある事業者の方やIT導入支援事業者として販売活動を行いたい販売店・ベンダーの方はお気軽にお問い合わせください。