ITベンダーの方の中には、複数のソフトウェアやサービスを開発・販売されている事業者の方も多いと思います。
できることならより多くの顧客に、より多くのソフトウェア・サービスを提供したい…その手段のひとつとして、IT導入補助金の活用提案は、非常に魅力的で販促効果も高いものです。
しかし、一般的なイメージとして「同じ補助金は1社に1回」。さあ、どの商品をIT導入補助金として提案すべきか…
その選択、「どちらも提案」「全部提案」とすることも可能かもしれません!
今回の記事は、複数のソフトウェア・サービスをお持ちのベンダーの方向けに、意外と知らないIT導入補助金「申請枠」の使い方、それを踏まえたツール登録の考え方について解説します。
※本時期は、IT導入補助金2023公式サイトの各種資料に基づき作成しています。
目次
IT導入補助金は複数回申請できる
まずはじめに、IT導入補助金では、過去に採択を受けた事業者の方も、再申請が可能です。
これについては別途、下記ページに詳しく掲載していますが
【2024年度】IT導入補助金を2回目以上(複数回)申請する際の条件・注意点- 別の申請枠で申請する
- 交付決定から12ヶ月以上あけて申請する
- 別の事業者として申請する
ことで、再申請が可能なのです。
「交付決定から12ヵ月以上あけて申請する」については読んで字のごとくです。「別の事業者として申請する」というのは、それほど多い例ではないかもしれませんが、同じ代表者の方が複数の法人を持っている場合や、法人とは別に個人事業主として事業をされているような場合に該当します。
クライアントが過去に採択例がある事業者だと分かった場合は、交付決定の時期と、「補助事業者」として申請した申請主体を確認しましょう。
「別の申請枠で申請する」については、これまでIT導入補助金にツール登録をしたことがない方、IT導入支援事業者になったことがない方には、ピンとこないかもしれません。
そこで、まずはIT導入補助金に存在する「申請枠」について、簡単に説明します。
「別の申請枠で申請する」とは?
IT導入補助金においては、大きく分けて3つの申請枠が存在します。
申請枠は主に、ITツールの機能によって決まります。
IT導入補助金の「通常枠」
通常枠の対象となるITツールの機能としては、下記に挙げる様々なプロセスにおける労働生産性向上・効率化につながるものと定義されています。
業務プロセス(共通プロセス)
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務・資金回収
- 供給・在庫・物流
- 会計・財務・経営
- 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス
業務プロセス(業種特化型プロセス)
- 業種固有プロセス(製造業、卸売業、小売業等々、業種ごとに固有のプロセスに対する機能が対象で、ITツールの登録要領には、該当する機能例も具体的に挙げられています)
汎用プロセス
- 汎用・自動化・分析ツール(業種・業務が限定されないが生産性向上への寄与 が認められる業務プロセスに付随しない専用のソフトウェア)
細かい要件は他にもありますが、大まかに機能の違いで言うと、上記のような区分けがされています。
なお、補助額はA類型とB類型で分かれており、A類型では5万円以上150万円未満、B類型では150万円以上450万円以下、補助率はともに1/2以内です。
IT導入補助金の「デジタル化基盤導入枠」
デジタル化基盤導入類型については、通常枠で挙げた業務プロセス(共通プロセス2または4)の中でも、“会計・受発注・決済・EC”のいずれかの機能を有することを要件としています。
つまり、より対象を絞り込んだ枠であるということです。
デジタル化基盤導入枠で補助金の申請を行う場合は、ITツール登録の時点で、上記に対応している旨を申告しておくことが必要です。
なお、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の補助額は会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上を持つツールについては350万円以下(下限なし)、1機能の場合50万円以下、補助率は約2/3以内です。
(補助額50万円までの部分については補助率3/4、それ以上の部分については2/3となるため、経費全体に2/3を掛けた金額とは異なります)
補助率が通常枠よりも高いため、4つの機能に該当するのであれば、こちらを選びたいという方が多いことでしょう。
IT導入補助金の「セキュリティ対策推進枠」
セキュリティ対策推進枠は特殊で、対象となるのは「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているサービスに限ります。
そのためこの記事では割愛させていただきます。
申請枠が違えば同時申請も可能
前述のとおり、IT導入補助金には3つの申請枠があり、異なる申請枠であれば、申請中または同じ年度内に交付決定を受けていても、申請が可能です。
ベンダーの方の視点で言えば、自社のソフトウェア・サービスをIT導入補助金のITツールとして登録する際、同じクライアントに同時期に提案する可能性があるツールは、できれば別の申請枠で登録しておくとよい、ということになりますね。
かといって、好きなほうを自由に選べるというものではありませんので、各申請枠の要件を踏まえて、最適な方法を見つける必要があります。
同時申請・複数回申請時の注意点
既に他の枠で申請中の場合や、過去に交付決定を受けている場合、新たな申請が採択を受けるハードルが上がります。そのため、どちらを先に交付申請するのかも、以下の注意点を踏まえて決めたほうがよいでしょう。
(後に申請するのが通常枠の場合)要件の目標値が高くなる
通常枠(A・B類型)では、労働生産性の向上率(1年後3%以上、3年後9%)を目標値として計画・申請し、それに対しても審査を受けます。過去3年間(IT導入補助金2020~2022)に交付を受けている場合、この伸び率の設定が1年後4%以上、3年後12%に引き上げられます。
誤って1年後3%以上、3年後9%で計画申請すると、要件を満たさない申請となってしまいますので、注意が必要です。
(デジタル化基盤導入枠が関連する場合)審査で減点される
過去の申請時の申請枠がデジタル化基盤導入枠の場合や、過去は別枠で今回がデジタル化基盤導入枠の場合、いずれも減点の対象となります。交付決定を受けたものだけでなく、別枠で「申請中」の場合も、減点対象です。
更に、減点対象の申請時の申請ITツールが、今回申請するITツールと同一の機能(会計・受発注・決済・EC)の場合、更に減点となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の記事は、複数のソフトウェア・サービスをお持ちのベンダーの方向けに、より多くのソフトウェア・サービスをIT導入補助金の申請対象とする場合の考え方、IT導入補助金「申請枠」の使い方についてご紹介しました。
申請枠は、ITツール登録時点で決まります。またどの申請枠に該当するかは、主にITツールの機能によって決まります。
これからITツール登録をしようとお考えの方は、ぜひG1行政書士法人にご相談ください。
G1行政書士法人では、IT導入補助金のIT導入支援事業者・ITツール登録から、交付申請、採択後の実績・効果報告まで、多数の実績(採択件数2,262件、2022年採択率90.9%)に基づきサポートを行っています。各種申請前の注意点・手続き説明から、交付申請時の申請内容の作成サポートまで、きめ細やかな対応を心がけています。