IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等のITツール導入にかかる費用の一部を、国が補助する制度です。
この制度を活用することで、ECサイトや会計・人事管理システムの導入、情報セキュリティ対策の導入などが可能になり、生産性向上や業務効率化などが期待できます。
しかし、だれでも簡単に補助金を受け取ることができるわけではありません。
IT導入補助金を受け取るためには、申請者とIT導入支援事業者(ITベンダー・サービス事業者)で協力し、決められた方法で申請を行い、審査を受けて採択される必要があります。
ここでは、IT導入補助金の申請をスムーズに行うため、申請準備から補助金交付後までの流れついて詳しく解説していきます。
目次
1. 申請前準備
まずはIT導入補助金にはどのような種類があり、対象となるツールはどういったものなのかを把握しておく必要があります。
公式サイトに公募要領が公開されていますので、熟読し、自社の導入するツールが補助金対象になるか、十分に理解しておくことが大切です。
以下に概要を記載していますので、参考にしてみてください。
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通常枠 |
セキュリティ対策推進枠 |
デジタル化基盤導入枠 |
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A類型 |
B類型 |
デジタル化基盤導入類型 |
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補助対象経費区分 |
ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 |
サービス利用料(最大2年分) |
ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 (対象ソフト:会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト) |
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補助率 |
1/2以内 |
1/2以内 |
3/4以内 |
2/3以内 |
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上限額・下限額 |
5万円~150万円未満 |
150万円~450万円以下 |
5万円~100万円 |
(下限なし)~50万円以下 |
50万円超~350万円 |
参考:(一社)サービスデザイン推進協議会 IT導入補助金2023 公式サイト
2.交付申請
交付申請を行うにあたっては、申請者とIT導入支援事業者が協力して手続きを進めていく必要があります。
具体的な流れを記載します。
2-1 申請マイページを開設する
「申請マイページ」は、IT導入補助金申請に必要な申請書が電子化されたもので、初めから終わりまでこのオンライン申請で行うようになっています。
まずはIT導入支援事業者から申請者に対して、申請マイページの招待を行います。すると、IT導入補助金事務局より申請者あてに、申請マイページ開設への招待メールが送らますので、申請者はそこから手続きを行います。
申請者とIT導入支援事業者で必要事項を入力し、申請書を作り上げていきます。
2-2 必要書類の準備
申請者側の入力時、申請マイページへアップロードする書類があります。必要な書類は下記です。
<法人の場合>
- 履歴事項全部証明書
- 法人税の納税証明書
<個人事業主の場合>
- 運転免許証または運転経歴証明書または住民票
- 所得税の納税証明書(その1またはその2)
- 所得税確定申告書
2-3 申請類型の決定
IT導入補助金では、ITツールの持つ機能や、対応する機能・プロセスの合計数、補助額を考慮に入れて、どの類型で申請するのか決定する必要があります。
通常、IT導入支援事業者の方が、自社のITツールがどの類型で申請するのがよいか把握していますので、申請者の方は確認の上、手続きを進めてください。
通常枠の場合、ソフトウェアが保有する機能を導入することによって特定の業務の生産性が向上するプロセスが、A類型が1プロセス以上、B類型が4プロセス以上であることが求められています。
また、補助額もA類型が5万円以上150万円未満、B類型が150万円以上450万円以下と定められています。
デジタル化基盤導入類型の場合、会計・受発注・決済・ECのうち、1機能しかない場合は補助額の上限が50万円、補助率は3/4です。2機能以上ある場合は50万円超~350万円、補助率は2/3と定められています。
このように同じ補助金内でも、導入ツールの性質によって申請枠・申請類型が分かれているため、申請者とIT導入支援事業者で相互に確認したうえで、手続きを進めてください。
2-4 「gBizIDプライム」アカウントの取得
gBizIDとは、一つのアカウントで複数の行政のサービスを利用できる法人・個人向けの認証システムです。
申請者が申請マイページへログインする際、「gBizIDプライム」が必要になりますので、取得していない場合は、gBizID公式サイトから新規取得してください。
なお、gBizID取得にあたっては、オンラインでの基本情報の入力と併せて、法人の場合印鑑証明書、個人事業主の場合印鑑登録証明書の郵送も必要となります。
その後、事務局よりメールが届き、パスワード設定すればアカウント発行完了となります。
【GビズIDとは?】取得方法や種類・ログイン方法を解説!2-5 みらデジ経営チェックへの入力
2023年より新たに追加となったフローです。
オンライン上でのアンケートに回答することで、同業種の他社と比較した際の自社の経営課題やデジタル化の進捗状況等を確認することができます。
IT導入補助金の申請時には、申請者が、マイページ開設時に用いたgBizIDプライムを利用(連携)して「みらデジ経営チェック」利用者登録を行ったうえで、経営チェックを実施することが必要です。
2-6 「SECURITY ACTION 自己宣言ID」の取得
SECURITY ACTIONとは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する、中小企業自らが情報セキュリティ対策へ取り組むことを宣言する制度です。
その宣言を行うことで取得できるのが、「SECURITY ACTION 自己宣言ID」です。
このIDの取得は、ITツールの導入を行うにあたって少しでも情報漏洩などのリスクを減らすため、申請者の必須要件となっています。
手続きは「SECURITY ACTION自己宣言」公式サイトより、オンラインで行います。
宣言内容によって「★一つ星」または「★★二つ星」いずれかを選択し、IDを取得することができますが、IT導入補助金の申請にあったっては、どちらを選択しても構いません。
2-7 交付申請内容の入力
申請者が、申請マイページにて、自社の基本情報や財務情報、経営状況等について入力し、必要書類の添付を行います。
その後IT導入支援事業者が、申請者の入力内容を確認したうえで、今回申請対象となるITツールの情報や、導入後の労働生産性に関する計画数値等の入力を行います。
その後再度申請者が、申請要件等を確認し、最低賃金や給与支給総額等の賃金引上げに関する設問に回答し、これまでに入力を行ったすべての情報を最終確認したうえで、申請(事務局へ提出)します。
3.補助金の交付
申請マイページから交付申請後、募集回ごとに定められた「交付決定日」に、「採否結果通知メール」が届きます。
ただし、採択されたらそれだけで補助金が交付されるというわけではありません。
実際にツールを導入し、代金を支払った証憑の提出が必要となります。
この段階を「事業実施」と呼び、その報告を行うことを「事業実績報告」と言います。そして、事業実績報告が承認されて初めて、最終的に補助金を請求することが可能になります。
なお、交付決定以降、申請者は「補助事業者」と呼ばれます。
3-1 補助事業の実施
補助事業者とIT導入支援事業者がツールの契約を行い、導入し、補助事業を実施します。
注意点としては、ツールの契約から支払いまでを、決められた「事業実施期間」内に実施・完了しなければならないことです。
事業実施期間は、交付決定日から始まり、終了日時は交付申請の締切日ごとにそれぞれ設定されています。
交付決定日より前の契約や、すでに納品、支払いしている場合は補助金対象外となります。同様に、終了日時までに支払いが完了しない場合も、対象外になります。
補助事業者の方の中には、事前に自己資金を用意することが難しい方もいらっしゃるかと思いますが、補助金の採択を受けていると金融機関からの融資を受けやすくなりますので、そちらの利用も検討いただくと良いかもしれません。
3-2 事業実績報告
補助事業を実施したことを報告し、確定検査を通過すれば、補助金交付となります。
報告には、実際にITツールの発注、納品、支払を行ったことが分かる証憑の提出が必要です。
こちらもオンラインでの手続きで、補助事業者が必要な情報入力と証憑の添付を行い、その後IT導入支援事業者が、内容の確認と一部情報の入力を行い、最後は補助事業者にて提出し完了となります。
3-3 補助金交付
事業実績報告が完了した後、事務局にて確定検査が入ります。
検査完了の通知がきたら、補助事業者はその内容を確認し、承認すると、補助金額が確定します。
確定から補助金交付までの期間は、IT導入補助金2023については未公表ですが、前年度では約1か月と程度とされていました。
4.事業実施効果報告
ITツールの利用状況と、導入によりどの程度生産性が向上したかを報告します。
IT導入補助金2023の場合、通常枠であれば3回(3年間)、デジタル化基盤導入類型では1年後と3年後で2回の報告が必要となります。
報告の方法は申請マイページから売り上げや年間労働時間等を入力するのみで複雑な手続きではありません。
IT導入補助金の効果報告とは?しないとどうなるか、報告期限や流れを解説!まとめ
手順をしっかり理解してスムーズに補助金を受け取りましょう
IT導入補助金を活用することで、負担金額の最大3倍まで投資を行うことができ、より大規模な事業拡大につなげることが可能です。
しかしながら、本業が忙しく申請をする時間がなかったり、そもそも申請が複雑で分からなかったり、不採択になると無駄になってしまうからといった理由で、補助金を活用できていない事業者の方もいるのが現実です。
「補助金の申請」と聞くと非常にややこしく、手間がかかるものに感じるかもしれませんが、手順を把握し一つ一つこなしていけば、諦める必要はありません。
申請者の方は、IT導入支援事業者の方のサポートを受けながら、申請を進めてください。
IT導入支援事業者の方で、申請業務が分からない、採択率を上げるためにサポートがほしい・・・という場合は、是非G1行政書士法人へご相談ください。
よりスムーズに、より審査が通りやすくなるよう、全力でサポートさせていただきます。