IT導入補助金は、全ての申請事業者に交付されるわけではなく、審査を経て採否が決まりますが、その審査の際に、加点項目があることをご存じでしょうか。
またその加点項目や要件は、申請する年度や申請枠によっても異なるため、過去に申請経験がある方であっても、最新の公募要領で、改めて確認が必要です。
加点項目はの中には、対象者が絞られるものや、要件を満たすのに時間がかかるものもありますが、どの事業者にとっても取り組みやすいものも含まれていますから、予め項目の要件を理解し、取りこぼしのないようにしたいところです。
そこで今回は、IT導入補助金2024の交付申請審査において、主な加点項目として挙げられている内容や、注意点について解説していきます。
目次
IT導入補助金2024の主な加点項目
IT導入補助金2024で加点、もしくは減点となる項目は公募要領に記されています。
今回は通常枠・セキュリティ対策推進枠・インボイス枠(電子取引類型・インボイス対応類型)で共通の加点項目についての解説となります。
※IT導入補助金2024公式サイトを参照していますが、公募要領や加点項目は年度内においても随時更新されますので、必ず申請時点のものをご確認いただきますようお願いいたします。
※複数社連携IT導入枠については、今回は割愛します。
地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得していること
まず紹介する加点項目は、「地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画(IT導入補助金の申請受付開始日が当該計画の実施期間内であるものに限る)の承認を取得していること」です。
地域未来投資促進法とは、地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域の事業者に対して相当の経済的効果を及ぼす「地域経済牽引事業」を促進することを目的とする法律です。
※参照:経済産業省公式サイト
市町村・都道府県が作成した「基本計画」をもとに、事業者が「地域経済牽引事業計画」を作成し、都道府県知事がこれを承認するのですが、この承認を取得しているとIT導入補助金2024の審査において加点を受けることができます。
交付申請時点で地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していること
次に紹介する加点項目は、「地域未来牽引企業に選定され、その『目標』を経済産業省に提出していること」です。
地域未来牽引企業は、地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、地域の経済成長を力強く牽引する事業展開や取り組みを経済産業省に選定された企業です。
加点対象として審査されるためには、地域未来牽引企業に選定されるとともに、地域未来牽引企業としての目標を経済産業省に提出していることも求められています。
「健康経営優良法人2024」に認定された事業者であること
令和 5年度に「健康経営優良法人2024」に認定されている場合も、加点を受けることができます。
健康経営優良法人認定制度とは、特に優良な健康経営(従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること)を実施している大企業や中小企業等の法人を視覚化することで、従業員や就業希望者、関係企業や金融機関などの第三者から、社会的な承認を受けられるような環境を整えることを目的とした制度です。
日本健康会議という団体が規定の評価基準をもとに「健康経営優良法人」の認定を行うことになっており、昨年度この「健康経営優良法人」に認定されている事業者はIT導入補助金の審査において加点を受けることが可能です。
「地域DX促進活動支援事業」において支援を受けた事業者であること
「地域DX促進活動支援事業」における支援コミュニティ・コンソーシアムから支援を受けた事業者であることも、加点項目として設定されています。
地域DX促進活動支援事業とは、地域単位で地域企業のデジタル変革、すなわちDXを実現するために、地域の産学官金(産業界・学界・行政・金融界)が支援コミュニティを創設し、地域企業のDX実現に向けて支援することを目的とした施策です。
「課題を抽出し、それに対しての戦略を立てるためのサポート」「ITベンダーなど、解決策を提供する事業者の紹介」など、地域企業がDXを実現させるためには経営・デジタルに関する専門知識やノウハウを補うための支援が鍵となりますが、そういった各種支援活動に要する費用の補助を受けることができる制度が、「地域DX促進活動支援事業」です。
加点を受けたい事業者は、IT導入補助金の申請時に申告することと併せて、支援を受けた支援コミュニティ・コンソーシアムに対して
- 「支援証明書」の作成
- 経済産業省地域経済産業グループ地域企業高度化推進課企画班への提出
を依頼する必要があります。
介護職員等特定処遇改善加算を取得している事業所を運営していること
介護保険法に基づくサービスを提供する事業所で、介護職員等特定処遇改善加算を取得しているものを運営している法人も加点されます。
介護職員等特定処遇改善加算とは、介護職員の処遇を改善するために、「介護職員処遇改善加算」に加えた特定加算として設けられた制度です。
介護職員等特定処遇改善加算に算定されるためには、介護職員処遇改善加算を取得していることに加え、介護職員処遇改善加算の職場環境要件の区分ごとに1つ以上の取組を実施することが求められています。
なお、IT導入補助金の加点項目の審査においては、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」の事業所情報・法人情報が活用されています。
女性活躍推進法・次世代法に基づく認定を受けていること
女性活躍推進法・次世代法に基づく認定を取得していることも加点項目の一つとなっており、具体的には以下のいずれかに該当することが求められます。
- 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定(えるぼし1段階目~3段階目又はプラチナえるぼしのいずれかの認定)を受けている者
- 次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定(くるみん、トライくるみん又はプラチナくるみんのいずれかの認定)を受けた者
上記については、従業員数が101人以上の企業は「一般事業主行動計画」を策定し、その旨を都道府県労働局に届け出ることが次世代法によって義務付けられていますが、届出を行った企業のうち、一定の要件または基準を満たした企業が申請を行うことによって厚生労働大臣より受ける認定です。
昨年度のIT導入補助金2023までは一般事業主行動計画を公表するだけで加点の対象となっていましたが、今年度のIT導入補助金2024からは、えるぼし認定もしくはくるみん認定を受けていることが加点の要件と変更になっています。
給与支給総額や最低賃金の引上げ
IT導入補助金において取り組まれることが多い加点項目として「事業計画期間における賃金引上げ計画を策定し、それを従業員に表明する」というものがあります。
この賃金引上げについては、通常枠で補助額が150万円未満の場合・インボイス枠(電子取引類型・インボイス対応類型)・セキュリティ対策推進枠において加点項目となります。
※通常枠で補助額が150万円以上の場合は、必須要件という扱いになりますので注意が必要です
具体的には以下二点の要件を満たした3年の事業計画を策定し、従業員へ表明することが求められます。
1. 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。
上記に加え、事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+50円以上の水準にした場合、更なる加点が行われます。
また、前述のとおり、通常枠で補助額が150万円以上の場合は賃金引上げ対応必須ですが、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+50円以上の水準にできた場合は、更に加点を受けることができます。
2. 事業計画期間において、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上向上させること。
(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年平均成長率1.0%以上向上)
※インボイス枠の電子取引類型で、中小企業・小規模事業者等以外の事業者の場合は、「給与支給総額を年平均成長率3.0%以上向上(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等以外が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年平均成長率2.0%以上向上)」と要件が変わりますのでご注意ください。
賃金引上げは他の加点項目に比べるとチャレンジしやすい内容となっており、当法人がサポートさせていただく中でも、IT導入補助金の申請をきっかけに取り組まれる事業者様が多くいらっしゃいます。
しかし、ここで注意点があります。
注意点:目標が未達だった場合、他の補助金審査で大幅減点になる
IT導入補助金2024からは、賃金引上げ目標が未達だった場合に対して、ペナルティが明記されました。
このペナルティ設定は、これまでのIT導入補助金から大きく変わった点となり、ペナルティの具体的な内容としては、事業実施効果報告で賃金引上げの未達が報告されてから18ヵ月間、IT導入補助金を含めた中小企業庁が所管する全補助金(※)の審査で減点措置が講じられるというものです。
※現時点では、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・引継ぎ補助金、成長型中小企業等研究開発支援事業、事業再構築補助金、中小企業省力化投資補助事業が該当します。
計画の承認や対象制度の認定を受けるなどのアクションが求められる他の加点項目と比較すると、賃金引上げは基本的に自社の取り組みのみで完結します。
しかし、未達の場合は他の補助金申請時に減点を受けることとなりますので、賃金引上げに取り組むか否かは自社の現状を考慮しながら決定するようにしましょう。
IT導入補助金の効果報告とは?しないとどうなるか、報告期限や流れを解説!IT導入補助金の審査項目
IT導入補助金は外部審査員会によって審査され、交付決定の可否が決まります。
審査項目は申請枠や類型によって異なりますが、通常枠・セキュリティ対策推進枠・インボイス枠(電子取引類型・インボイス対応類型)で共通している主要な内容をご紹介します。
※複数社連携IT導入枠については割愛します。
<共通している主な審査項目>
審査項目 |
審査事項 |
事業面からの審査項目 |
l 自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか |
政策面からの審査項目 |
l 生産性の向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか l 加点項目にある賃上げに取り組んでいるか |
※参照:IT導入補助金2024公式サイト
加点項目については今回ご紹介した全ての内容に取り組むのは簡単ではありませんし、現実的に難しいという方がほとんどだと思いますが、審査項目における「自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか」「生産性の向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか」に関しては、どこまで申請内容に盛り込めるかが重要なポイントになると考えられます。
冒頭でもお伝えしたとおり、IT導入補助金は申請すれば誰でも採択されるものではないため、他の事業者よりも加点項目や審査項目を踏まえた申請書を作成できるかという点が、IT導入補助金採択の鍵になります。
まとめ
今回はIT導入補助金の加点項目について解説しました。
全ての申請が採択されるわけではないIT導入補助金ですが、せっかく応募するからには、採択される可能性を少しでも高めたい方がほとんどですので、ぜひ今回お伝えしたポイントを活かした交付申請を作成していただければと思います。
G1行政書士法人では、独自のノウハウや知識を活かして今回ご紹介した加点項目や審査項目を考慮した交付申請内容作成の支援を行っています。
「IT導入補助金で採択される確率を上げられるような申請書を作成したい!」という方は、是非G1行政書士法人にご相談ください。
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