この記事は、IT導入補助金2023に関する解説です。IT導入補助金2024に申請を予定されている方は、下記ページをご参照ください。
IT導入補助金2024【賃上げ目標】注意点と設定・報告方法IT導入補助金においては、ほとんどの申請枠・類型で「賃上げに取り組んでいるか」という点が審査項目になっていることをご存じでしょうか。
賃上げは、申請時点で従業員のいない事業者も含め、どの事業者も対象になるという点で、IT導入補助金の加点項目の中では比較的取り組みやすい項目です。
しかし実際に賃金を上げるということは、事業者の方々にとって簡単な決断ではないため、「IT導入補助金を申請するにあたり、賃上げ目標の詳細を事前に把握しておきたい」という方が少なくないでしょう。
そこで今回は、IT導入補助金の賃上げ目標の表明・報告方法や、達成できなかった場合のペナルティの有無等について、紹介していきたいと思います。
目次
賃上げ目標とは
「賃上げ目標」とは文字通り、賃金の引き上げに取り組むことを、IT導入補助金を申請する事業者に求めるものです。
具体的な内容としては「給与支給総額の増加」と「事業場内最低賃金の増加」になります(詳細な基準や数値については後述します)。
賃上げへの取組みが審査項目となっているのは、IT導入補助金が、中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上を目的とした補助金であるためです。
IT導入補助金における労働生産性は、時間あたりの付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)として定義されていますが、ITツールを導入し、時間当たりの生産性を増加させ、それを従業員の給与に還元するという事業者を、より高く評価したいという狙いが背景にあるためです。
賃上げ目標が加点になる場合/必須の場合
賃上げが審査の加点項目扱いになるか、もしくは申請の必須項目になるかは、申請枠や類型によって異なります。
<加点となる申請枠・類型>
- 通常枠(A類型)
- セキュリティ対策推進枠
- デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型以外)
<必須の申請枠・類型>
- 通常枠(B類型)
通常枠(A類型)、セキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型以外)においては、賃上げはあくまで審査の加点項目の一つであり、事業者が任意で選択できます。
一方で通常枠B類型については、申請に際し、賃上げ目標が必須となりますので、注意しましょう。
なお、デジタル化基盤導入枠の複数社連携IT導入類型においては、賃上げ目標の取組みについて規定がありません(審査項目にも加点項目にもなりません)。
賃上げ目標の策定と表明方法
申請枠・類型に共通すること
賃上げ目標の策定と表明方法については、いずれの申請枠・類型においても、「給与支給総額」と「事業場内最低賃金」の引き上げが求められます。
また、賃上げの取組みを行う旨を交付申請までに従業員に表明しなければなりません。つまり、事業の実施に当たっては従業員の理解が不可欠です。
表明方法は、「社内掲示板等への掲載」「朝礼時や会議、面談時等で口頭での周知」「書面、電子メール」等、任意の方法で構いません。
申請時点において、従業員に表明したことの証拠書類等の提出は求められていませんが、申請時に賃金引上げ計画を従業員に表明したと申告したにも関わらず、実際には表明していないことが交付後に発覚した場合は、交付決定が取り消されます。虚偽の申告とならないよう、従業員への表明は必ず行いましょう。
なお、従業員を雇っていない個人事業主や、いわゆる「一人会社」の方の場合も、賃上げ目標の対象となります。
現状がこのような事業形態の場合、従業員を雇った際に同様の要件を満たす取り組みを行うか、が問われます。
具体的な数値目標等については、後述の通り、申請枠・類型ごとに異なります。
※下記記載以外にも、申請枠・類型によって注意事項があります。申請に際しては、必ず公募要領を併せてご確認いただきますようお願いいたします。
通常枠A類型
以下の要件を全て満たす事業計画を策定し、従業員に表明していること
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
・事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
※なお、上記に加え、事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+50円以上の水準にした場合、更なる加点を行う
引用:IT導入補助金2023 後期事務局公式サイト公募要領
通常枠B類型
以下の要件を全て満たす3年の事業計画を策定し、実行すること。
一 交付申請を行う時点で、以下の二及び三に規定する賃金引上げ計画を策定し従業員に表明していること。
二 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させること。ただし、被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用 に取り組む場合は、年率平均1%以上増加させること。
三 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+ 30円以上の水準にすること。
引用:IT導入補助金2023 後期事務局公式サイト公募要領
セキュリティ対策推進枠
以下の要件を全て満たす3年の事業計画を策定し、従業員に表明していること。
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加 (被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用 に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
・事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。
※なお、上記に加え、事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最 低賃金+50円以上の水準にした場合、更なる加点を行う。
引用:IT導入補助金2023 後期事務局公式サイト公募要領
デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型)
以下の要件を全て満たす3年の事業計画を策定し、従業員に表明していること。
・ 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加 (被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
・ 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。
※なお、上記に加え、事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+50円以上の水準にした場合、更なる加点を行う。
引用:IT導入補助金2023 後期事務局公式サイト公募要領
デジタル化基盤導入枠 (商流一括インボイス対応類型)
以下の要件を全て満たす3年の事業計画を策定し、従業員に表明していること。
・事業計画期間において、中小企業・小規模事業者等については、給与支給総額を年率平均1. 5%以上増加(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先 立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1.0%以上増加)。
中小企業・小規模事業者等以外については給与支給総額を年率平均3.0%以上増加(被用者保険の適用拡大の対象となる中 小企業・小規模事業者等以外が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均2.0% 以上増加)。
・事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。
※なお、上記に加え、事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最 低賃金+50円以上の水準にした場合、更なる加点を行う。
引用:IT導入補助金2023 後期事務局公式サイト公募要領
賃上げ状況の報告方法(効果報告)
IT導入補助金では、申請枠や類型を問わず、ITツール導入後の事業の成果を事務局に伝えるための「事業実施効果報告」が必要となっています。
効果報告に必要な情報は申請枠や類型によって異なりますが、賃上げに関する項目以外に、以下のような数値・資料があります。
- 売上
- 原価
- 従業員数
- 従業員一人当たりの年間の平均労働時間
- 給与総支給額
- 事業場内最低賃金(時給換算)
- 賃金台帳
- ツール利用状況キャプチャ
- セキュリティ対策状況
- インボイス対応状況
この効果報告は、補助金が交付される前に行った、ITツール契約・発注、納品、支払いなどに関する「事業実績報告」とは別のものです。
申請枠・類型、申請タイミングによって報告時期が定められていますので、事務局からの案内に従い、必ず手続きを行いましょう。
効果報告も、申請時に使用した「申請マイページ」上で行います。
IT導入補助金の効果報告とは?しないとどうなるか、報告期限や流れを解説!※実際に効果報告を行うに際しての詳細は、「事業実施効果報告の手引き」や、事務局からの案内をご確認ください。
賃上げ目標未達の場合のペナルティ
「賃上げ目標を達成できなかった場合、補助金返還などのペナルティなどは発生するのか」というご質問をお客様からよく頂きます。
こちらの回答としてはずばり、「申請枠・類型によって異なる」となります。
以下、それぞれ確認してみましょう。
補助金返還などのペナルティが設定されていない申請枠・類型
通常枠(A類型)やデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・商流一括インボイス対応類型)の場合、賃上げ目標が未達でも、補助金返還などのペナルティが設定は設定されていません。
補助金返還などのペナルティが設定されている申請枠・類型
通常枠B類型の場合は、同じ通常枠のA類型と異って、賃上げ目標を達成できない場合、残念ながら補助金返還などのペナルティの対象となります。
給与支給総額については、3年度目の効果報告の時点で、事業場内最低賃金については毎年3月時点で、それぞれ達成・未達成の判定が行われます。
その結果、補助金の全部又は一部を返還する義務を負うことになりますので、補助金採択後の事業の実施においては十分に注意するようにしましょう。
まとめ
今回はIT導入補助金の賃上げ目標についてご紹介しました。
通常枠B類型以外においては、賃上げの取組みは加点項目としての選択式であり、また目標に達することができなかった場合のペナルティも設定されていません。
しかし、賃上げの取組みの状況については、「事業実施効果報告」として、決められた期間に事務局に申告する必要があります。
効果報告は、補助事業者の義務として全申請枠・類型において必須であり、給与支給総額や事業場内最低賃金を、数値で正確に申告する必要があります。
補助金の交付申請段階から、上記を踏まえて、計画的に事業に取り組んでいただくことをおすすめします。
G1行政書士法人では、IT導入補助金開始当初から、申請に関する様々なサポートを行っています。
多数の申請者様、IT導入支援事業者様(ITベンダー・サービス事業者様)からご依頼いただき、累計採択件数は2,000件以上(2023年5月31日現在)、IT導入補助金2022の採択率は90%超、という実績に至っております。
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