人材確保に苦戦している多くの中小企業の方にとって、業務の省力化に向けた設備投資はいまや不可欠であると言えますが、予算に余裕がなく省力化投資に踏み切れないという事業者様もいるのではないでしょうか。
そのような方に活用いただきたいのが「中小企業省力化投資補助金」です。
この記事では、中小企業省力化投資補助金(以下「省力化投資補助金」)の概要や手続きの流れ、注意点などを解説していきます。
目次
省力化投資補助金とは
省力化投資補助金は2024年から新たに始まった制度で、中小企業等の売上増加や生産性向上をバックアップするために、人手不足に直面する中小企業等を対象にIoT・ロボットといった省力化投資をサポートすることが目的の補助金です。
省力化投資を通じて中小企業等の付加価値額増加や生産性向上、ならびに賃金引上げを図ることを狙いとしています。
詳細は後述しますが、一般型の場合は補助金額が最大1億円と、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金など他の補助金と比べて高く設定されています。
そのため、より大がかりな設備投資をしたい事業者の方にも適している制度となっています。
省力化投資補助金の概要
省力化投資補助金は、現在「カタログ注文型」「一般型」の2つの類型が用意されていますので、類型ごとの概要を解説していきます。
※一般型については、8月末に第3回の応募申請が締め切られており、第4回の公募時期や公募有無については未定となっています。
また、以下は第3回公募終了時点での情報となるため、申請の際は最新の公募要領等を必ずご確認ください。
カタログ注文型
カタログ注文型は、付加価値額の増加や生産性向上に役立つ予め登録された汎用製品を、カタログの中から選び販売事業者と共に申請する仕組みとなっています。
対象となるのは、券売機や自動チェックイン機、スチームコンベクションオーブン、配膳ロボットといった人手不足解消に寄与する汎用製品です。
カタログにある製品を選ぶだけなので、手続きが分かりやすく導入が容易であるという点が特徴です。
<カタログ注文型の概要>
対象経費 |
(1)カタログに掲載されている省力化効果のある製品の本体価格 |
補助金上限額 |
従業員数5人以下:200万円(300万円) ※補助事業実施期間終了時点で以下2点を達成する見込みの事業計画を策定した事業者は、補助金上限が括弧内の金額に引き上げられます。 ①事業場内最低賃金の45円以上増加 ただし、策定した目標を正当な理由無く達成できなかった場合、補助金額が減額されますので注意しましょう。 |
補助率 |
1/2 |
なお、カタログ注文型は補助事業の成果によって収益が発生したと認められた場合、原則受け取った補助金の範囲内で返納するよう(いわゆる「収益納付」を行うよう)定められています。
一般型
一般型は、カタログに載っていない省力化製品やオーダーメイドの設備、システムなども対象にできる点が特徴です。
そのため、事業者ごとのニーズに合わせて自由度の高い設備投資を行えるのが大きなメリットとなっています。
<一般型の概要>
対象経費 |
機械装置・システム構築費(必須)、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費 |
補助金上限額 |
従業員数5人以下:750 万円(1,000万円) ※補助事業実施期間終了時点で以下2点を達成する見込みの事業計画を策定した事業者は、補助金上限が括弧内の金額に引き上げられます。 ①給与支給総額の年平均成長率6%以上増加 ただし、いずれか一つでも達成できなかった場合は、従業員規模に応じた補助金上限額との差額分を返還する必要がありますので、注意しましょう。 |
補助率 |
<中小企業> ※指定する一定期間内で、地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が、全従業員数の30%以上である月が3か月以上ある場合は、括弧内の補助率へ引き上げられます。 <小規模企業者・小規模事業者、再生事業者> |
なお、一般型の場合は収益納付を求められることはありません。
カタログ注文型と一般型の違い
「省力化投資補助金に興味はあるけど、カタログ注文型と一般型のどちらが適しているかわからない」と悩まれる方もいるかと思います。
それぞれの類型には次のような違いがありますので、導入したい設備や、自社の状況に合わせてどちらを使うか検討してみてください。
<カタログ注文型>
●申請書類や手続きがシンプル
●申請から交付決定まで1~2か月ほどのため短期スパンで補助事業を始められる
●カタログに掲載済の設備しか導入できない
<一般型>
●補助金上限額が高く設定されているため、オーダーメイド設備や大規模投資に適している
●自由度の高い設備投資を行える反面、より細かい事業計画書を作成する必要がある
●申請から交付決定まで最短でも2~3か月以上を要する
なお、別の補助事業・補助対象経費の場合は、カタログ注文型と一般型をそれぞれで申請することができますので、事業計画などに応じて両方の類型を活用するのも一つの手段です。
対象となる事業者
対象となる事業者は、カタログ注文型・一般型共通で以下のとおりです。
<共通>
中小企業者、特定非営利活動法人(NPO法人)、社会福祉法人、組合関連等
持続化補助金など他の補助金では補助対象外となることもある社会福祉法人等も省力化投資補助金であれば対象になっています。
なお、カタログ注文型・一般型ともに「みなし大企業」に該当する場合(「会社の株式や出資の一定割合を大企業が保有している」「大企業の役員や職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている」など)、補助対象外となりますので注意が必要です。
手続きの流れ
省力化投資補助金の大まかな手続きの流れは、以下のとおりです。
<カタログ注文型>
1.販売事業者・省力化製品を選択
2.事業計画書作成・必要書類の準備
3.販売事業者と共同で申請
4.採択/交付決定
5.補助事業実施
6.実績報告
7.補助金請求
8.補助金交付
9.効果報告(3年間)
<一般型>
1.事業計画書作成・必要書類の準備
2.応募申請
3.採択
4.交付申請
5.交付決定
6.補助事業実施
7.実績報告
8.補助金請求
9.補助金交付
10.効果報告(5年間)
カタログ注文型は販売事業者と共同で申請を進める仕組みとなっており、採択=交付決定です。
一方で、一般型は申請者のみで申請を行う点や、採択後に交付申請を経てはじめて交付決定するなどの違いがあります。
主な注意点
省力化投資補助金には様々なメリットがある反面、次のような注意点も存在します。
発注・契約などの着手は交付決定後
設備導入のための発注や契約、支払いなどは、交付決定後に着手する必要があります。
交付決定前に発注や契約、支払いなどを行った場合は、補助対象外となってしまい補助金を受け取ることができなくなりますので注意しましょう。
申請方法は電子申請のみ
省力化投資補助金の応募はオンラインの電子申請のみで、紙面郵送の申請は認められていません。
また、申請に際しては「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。
GビズIDプライムアカウントは発行手続きに時間がかかることもありますので、なるべく早めに準備しておきましょう。
他の補助金との併用制限がある
類型ごといずれかの条件に該当する場合は、補助対象外の要件に該当するため応募しても採択されません。
<カタログ注文型>
●過去10か月以内に「ものづくり補助金」の交付決定を受けている場合
●過去3年間に「ものづくり補助金」の交付決定を2回以上受けている場合
<一般型>
●「ものづくり補助金」または「事業再構築補助金」の交付決定を受け、応募申請時点で補助金が交付されていない場合
●過去3年間に「ものづくり補助金」または「事業再構築補助金」の交付決定を2回以上受けている場合
省力化投資補助金に応募を検討している事業者で、過去にものづくり補助金や事業再構築補助金を利用したことがある場合は、上記に該当していないことを確認しましょう。
補助金交付後に「効果報告」を行う必要がある
他の多くの補助金と同様、省力化投資補助金も設備導入後の効果報告を提出するよう定められています。
効果報告を提出しない場合、交付取り消しや補助金の返還などのペナルティが生じることもありますので、忘れずに対応するようにしましょう。
まとめ
本記事では、省力化投資補助金の概要や手続きの流れ、注意点などを解説しました。
省力化投資補助金は他にも様々な条件や注意事項がありますので、興味のある方はG1行政書士法人までご相談ください。
当法人はIT導入補助金をはじめとする各種補助金申請に関する支援を多数提供しており、省力化投資補助金の事業計画書作成サポートや代理申請、申請フォローにも対応しています。
累計4,500件以上のサポート実績や積み重ねたノウハウ、専門家としての知見をフル活用したバックアップが可能ですので、省力化投資補助金の申請を検討している中小事業者の方や、お客様へ自社製品を販売する際に省力化投資補助金活用を提案したいと考えている販売業者の方はお気軽にお問い合わせください。